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実践、社会契約論

さあ、プリントを読みましょう。
段落交代でね。
今日は、22日だから、22番の人!

すると、窓際の1列から 不満の声

昨日も読みましたよ

…そうだった。
このクラス、昨日も授業があったから
昨日は21番の人の日だった。
席順は、出席番号順なのだった。


だから、今日は廊下側から行きましょうよ、先生。


そこで、一斉にあちこちから
あっちからがいい、こっちからがいい、
そこから始まるのなら、
後ろに向かわないで、橫に行って欲しい
橫じゃなくて、斜めにしましょう
どっちだっていいじゃないか、
お前ら、静まれ!
とイライラする者、
ここは、先生が決めればいい、
先生の授業なんだから、
と言い出す者も 現れる


わー、完全に
「万人の万人に対する闘争」
になってるよ。




それじゃあ、「関心・意欲・態度」を背景に
絶対的な権力を発動して、
有無を言わさず わたしが決めようかな、
とも思ったが、

いやいや、
一番正当な順番を考えて そこから選ぼう
と思った。
が、それぞれの主張が
どれも一理ある上、
うるさすぎて 聞き取れない

ここで間違えると 革命が起きるかも。

それじゃあ、
常に個人が、
自分と同時に共同体の幸せを志向する意思を持つように
啓蒙するほうがいいのじゃないか、
と、考えた。




でもこの状態じゃあ、わたしの声、届くわけないか…。



結局、わたしは、
とりあえず、息を深く吸って、
静かに吐いて、
ああ、困ったな、
と 授業のありのままの姿を
眺めただけだった。


生徒たちも、いつしか静まって、
誰かがちゃんと
読み始めた。

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