フランスの女(その5)
前回(フランスの女・抄—その4)は、第二章の終わりの場面——ルイとジャンヌが間借りしている大家のアンドレアス・ベレンスの死を悼む息子のマチアスがベートーヴェンの弦楽四重奏曲《ラズモフスキー三番》を電蓄で鳴らす場面——から書きはじめて、冒頭部のジャンヌが美しく着飾る場面に遡行するという形で書いてしまったために、ベルリンにおけるフランス駐留軍とソ連駐留軍の合同舞踏会でのジャンヌの怪しいほどの美しさとルイの異様なまでの嫉妬、そしてジャンヌの二度目の妊娠と出産——今度こそおれの子だ