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短歌【夜鳴き鶯と薔薇】から

あの人に捧げる紅き冬薔薇に 恋の思いの命託さん
 
苦悩する淵から見える冬の薔薇 血の色哀し夜鳴き鶯

奇麗な囀りですが、地味な小鳥/ナイチンゲール(夜鳴き鶯)

📖オスカー・ワイルド作の

[ナイチンゲールと薔薇]の話です

ある日ナイチンゲールは1人の美しい若者が嘆いているのを見ました。
 
「《赤いバラを持ってきてくださるなら、貴方と踊って差しあげますわ》と彼女は言ったけど、我が家の庭の何処を探したって、赤いバラなどありはしない。赤いバラが無いばかりに僕の一生は惨めなものになってしまうのだ」
 
それを聞いたナイチンゲールは思いました。
「とうとう本当の恋人を見付けたのね」
 
「本当の恋人って、どんなものか知らなかったけれど、くる夜もくる夜も
私は恋の歌を歌ってきたし、お星様にむかって恋人の話もしてきたわ。
でも、漸く今この目でその恋人を見ているのだわ」
 
ナイチンゲールに気付かない若者は更に言葉を続けます。
「明日の晩、王子が催されるは舞踏会に彼女も行くだろう。
僕が赤いバラを持って行けば彼女は僕と踊ってくれるのかな。
赤い薔薇を持って行かなければ、彼女は僕に目もくれはしないだろう。
考えるだけで 僕の胸は張り裂けてしまいそうだ」
 
それを聞いたナイチンゲールは、この青年が本当の“恋人なのだろう”と
確信します。ナイチンゲールは青年が気の毒でなりません。
 
ナイチンゲールは青年の為に、赤いバラを探してあげようと考え、
あちこちのバラを尋ねました。
 
「赤いバラを1輪くださいな。そしたら、私が1番きれいな歌を歌って
さしあげますから」
 
けれどバラの木達は言います。
「私のバラは白なのです」
「私のバラは黄色なんです」
 
そして黄色のバラが教えてくれました。
「学生さんの家の窓の下にはえている私の兄弟の所へ行って御覧なさい。
お望みのバラをくれるでしょう」
 
それを聞いてナイチンゲールは喜び勇んで、学生の家に行き、
窓の下に生えているバラの木に
「赤いバラを1輪くださいな。そしたら、私が1番きれいな歌を歌って
さしあげますわ」
 
けれどバラの木は言いました。
「私の花は確かに赤です。でも冬の寒さと霜の冷たさや嵐に傷つき、
私は既に花を咲かせる事はできないのですよ」
 
それでもナイチンゲールは言います。
「たった1輪の赤いバラが欲しいのです。どうにかならないでしょうか? 

夜鳴き鶯と薔薇

バラの木は言い難そうに1つのことを教えてくれました。
 
「もし、君がバラを望むなら月の光の差す間、音楽でバラの花を作り、
その花を君の心臓の血で染めなければなりません。トゲを胸に押し当て、
一晩中私に歌を歌って聞かせなければならない。 君の血が私に流れ込んで、1輪の赤いバラができるのです」
 
ナイチンゲールは呟きます。
「1輪のバラに死は大きな代償だわ。でも恋は命より尊いものだわ。
それに 小鳥の心臓になんて、人間の心臓に 較べたらどれほどの価値が
あるのかしら」
 
そして飛び立ったナイチンゲールは学生を見かけます。
「喜んでください、赤いバラをさしあげます。でもその代わりに貴方は本当 の“恋人”になってくださいね」
 
けれど学生にはナイチンゲールの言っている事など判るはずがありません。彼は本の世界しか知らなかったのです。
 
その夜、月が上り輝いた時、ナイチンゲールは自分の胸にバラのトゲを
押しあて、自分の知っている限りの恋の歌を一晩中歌い続けました。
そして1輪の美しい赤いバラが咲きました。
 
バラの木は嬉しそうに花が咲いた事をナイチンゲールに教えました。
けれどナイチンゲールは答えませんでした。
トゲをさしたまま、高い草の中に倒れて死んでいたのです。
 
お昼になって学生は自分の窓の下に美しい赤いバラが咲いていることに
気付いて大いに喜びました。
そして其のバラを摘み取り恋する女性の元へと行きました。
 
ところが女性は
「あら、そのバラの色は今夜着るドレスの色に合いませんわ。
それに私は他の方から宝石を頂いてしまったの。
宝石の方が花よりずっと高価だと思いませんか?と言うのです。
 
学生は憤慨して踵を返し折角のバラを道端に投げ捨ててしまったのです。
そして学生は言いました。
「恋なんて、何と馬鹿げたものなんだろう」
そして家に帰ると本を読み始めたのです。


 [読後の独白]
詰んない男ですね~
アッサリと諦めてしまうなんて恋など出来る訳ないですよ。
次、行こうの気持ちが無ければ恋に無縁の一生が保証されますね😁
ナイチンゲールの行為は無になり浮かばれません~
純粋なナイチンゲールに白薔薇を。