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#5 もしもタバコが喋ったら

 もしもタバコが喋ったら。喫煙者なら誰もが一度は考える事だろう。
 もしもタバコが喋ったら。多分恋しちゃうんだろう。僕は恋しちゃうんだろう。本当の本当に好きになっちゃうんだろう。
 人によるだろうが、僕は1日1箱タバコを吸う。1本あたり10吸いと仮定しよう。10吸い✖️20本で200。1日200回僕はアイツとキスをしている事になる。すっごい好きじゃん。しかもこの可愛いタバコが喋るときた。愛が溢れ出して止まらなくなってしまうだろう。
 きっとすっごい可愛いんだろうな。銘柄によって性格が全然違う。僕は水色のハイライトを吸っているのだが、この子はどんな性格なのだろうか。キスの味から想像すると、強気で変わり者なのかな。セブンスターは昔のヤンキー風に言わせてもらうとマブい娘って感じか。マルボロは元気で笑顔が可愛い娘なのだろう。
 しかし問題もいくつかある。
 まず誰かと一緒にタバコを吸うのが嫌になってしまうのではないか。友達に自分たちのHを見せているようなもんだ。俺の友達はタバコとこんなスケベな話してるのかー、とか。なんか嫌だなぁ。友達と2人でタバコを吸っていたらそれは4Pってことか。それはマズイ。マズすぎる。逆にありかも。難しいなあ。下北沢の駅前の喫煙所は毎晩乱行パーティーということだ。喫煙所が静かな時代は終わりなのだ。常にタバコの妖艶な声、ダンディーで艶っぽい声でいっぱいになってしまうだろう。
 次にますます浮気ができなくなってしまうということだ。レジでタバコを買う時に、「ヤッホー」とタバコが話しかけてくるわけだ。デートの時に改札前で待ち合わせするようなものだ。そこで僕がハイライトではなく、昔吸ってたラッキーストライクなんて買おうもんならもう大変だ。「は、あんた何してんの。誰よその娘は」とまあこんな感じで修羅場になってしまう。ハイライトからしたら「何今さら元カノとヨリ戻そうとしてんのよ。」ラッキーストライクからしたら「私と別れてからずっとハイライトだったのね。毎回あなたがあの娘を選ぶとき、私どんな気分だったと思う?」ああ、板挟みになってしまった。浮気どころか別れることすら許されないではないか。
 タバコは喋らない方が良いのか。結局どうなのだろうか。毎日毎日こればかり考えている。人類が絶滅しないよう、人と人が恋に落ちるように、神様はタバコが喋らないように作ったのだろう。

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