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コロナ世代卒業前夜

さて、もう少しで大学の卒業式。卒業前夜ともなると、自然にこの4年間が思い返される。尤も自分の4年間の思い出など大して文にする気も起きないので、我々2020年度大学入学世代を取り巻く状況がどう変わってきたか、というのを振り返りたいと思う。基本的に感染症との戦いである。というか振り返っているとそうなってしまった。


我々24卒世代の1年目の記憶は、どうしたってコロナが1番上に来る。現大4,大1,高1世代は、大学、高校、中学のほぼ全てをコロナ禍で過ごした悲しき世代である。いずれも3年目にあたる年はかなりマシだったが、中3と高3は受験、大3は就職活動と本来の学生生活を楽しむ余裕はなかったはず。これらの世代は本当に多大なるダメージを受けた。我々大4世代の大学1年目は、社会からの行動するなという圧力に抗ったり、屈したり、あるいは隙間をくぐるような1年だった。遠方の大学に受かったが1年目はずっと実家にいた、なんて同級生も少なくなかった。それでも若者たちはそう簡単にへこたれない。大学の制限が緩くなった隙に新歓やら体験会やらを行い、ギリギリ延命しているサークルも数多く見たし(もちろん延命できなかったサークルもある)、研究室やゼミ等は流石にある程度の強制力で以て元の水準に近い本活動をできていたらしい。こうして我々が2年生になる次の年に、ギリギリバトンは渡されたわけである。


2年目になってマシになるかと思ったが、1年目よりコロナの正体がわかり始めた分、社会の分断はより大きくなっていた気がする。医学的見地から厳しい制限を叫ばざるを得ない医師会、高齢者の重症・死亡率データから必死にならざるを得ない高齢者、票の関係で高齢者の意見で動かざるを得ない政治、命を盾にされると一生の思い出も何もかも捨てざるを得ない若者たち。コロナ以外の出来事が起こらないからコロナばかり特集せざるを得ないマスコミの存在もあった。正当な理由で袋叩きにできる対象を見つけたい世間全体と先の分断が相まって、大学生を取り巻く情勢が摩訶不思議であったことは確かである。我が大学では大学祭の復活、課外活動制限の大幅緩和と当局がかなり努力してくれたが、学祭の運営委員や大学事務局の課外活動担当を見ていると、先に述べた社会の様々な立場の意見が、大学という社会の縮図内でもぶつかっていることはひしひしと感じた。


3年目にもなるとワクチン接種も浸透しかなりマシに。課外活動はコロナ以前の運営体制を知るものがいなくなり、ノウハウの伝達がないという問題が発生していたとはいえ、合宿が解禁されたり飲食も合法になったりとかなり活動がマシになったと言える。そんな矢先に我々の世代が直面した次なる壁が就職活動。夏インターンだけ行って院進を決めた身なので、就活の実体験としての偉そうなことはあまり言えないが、例年と異なった点を2つ覚えている。1つは早期化が前年度までよりもさらに加速したこと。ここ数年のトレンドではあったらしいが、オンライン化により更に前倒しが進んだように見えた。2つ目は「学生時代に力を入れたこと(通称ガクチカ)」の不足。2年間コロナで軟禁された直後、夏インターンのエントリーシートや面接で聞かれるのは「学生時代に頑張ったこと」。ネットを見ると「学生時代とは一般的に大学生活を指します(高校以前のことはあまり書きません)」「勉強と答えると書き方が難しいです」。この2手を封じられてはバカ正直に家に引きこもっていた面々はほぼどうしようもない。社会の言う事を聞く誠実な者ほどバカを見る選考に、かなりの違和感を感じていた。もちろん企業もそれを承知で「このような状況下で大変だったのは承知の上で〜」を枕詞にかなり気を遣ってくれている印象を受けたし、学生側も資格勉強やアルバイト等工夫をこらしてガクチカを捻出していた。それでもやはり、そもそもが場外乱闘ありのルール無用バトルである就職活動において、メインの戦術の多くを制限されて多くの人が頭を抱えていたことを記憶している。


4年目、ここ1年間は記憶に新しいようにマスクの着用義務も撤廃され、元の日常を取り戻したと言って良くなった。タイミーや派遣で出会う名も知らぬ人たち、あるいは大学の友人や中高からの友人に話を聞くと、大学での新しい人間関係が構築できないまま終わった、という人は多めに見かけた。4年生から新しく友達を作れといってもなかなか難易度が高い。そうなって当然であろう。とはいえ何もしていないと自虐しながらも何かしらの取り組みをしている人たちが多く、なかなかたくましく感じたものでものである。


と、ここまでが4年間の流れであった。我々24卒世代は、通常時とはかなり異なる状況を強いられながらも、よく頑張って卒業までこぎつけたと思う。世相はどうしてもたまに乱れるもので、過去には米騒動で甲子園が中止になったり、学生運動で東大入試が中止になったりしている。第二次世界大戦で大学生が軍に刈り取られたりもしている。抗えぬ大きな流れを経験した先人たちがいる、とわかるだけでも幾ばくか気持ちはマシになる。人生で最も多感とも言える時期を潰されるやるせなさを経験したのは我々の世代だけで、期待を潰される経験をした者は総じて強い。将来後輩たちの学生生活が脅かされるような危機が起きた際に最も力になれるのは我々の世代である。どうか誇りを持って、新年度を迎えてもらいたいと思う。


-希望を見せぬ答辞などない-



今日も人生、超カラフル。

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