砂沼から言葉歩いてー2020
2020　第六巻　 1月から12月 　2010年3月　脳梗塞から九年目　失語症・言語発達障害・　聴覚障害高次脳機能障害・発声発語・感覚障害

砂沼から言葉歩いて-2020-3

俳句

辻村 麻乃先生

たいまつを一筋注ぐ送水会　俊克

　若狭小浜市に遠敷明神を祀る神宮寺というのがあり、送水会（そうすいえ）とはその3月2日の行事である。
夕方から韃陀（東大寺のお水取りから誕生した歌舞伎舞踊）が踊られ、境内では護摩が焚かれる。その火を善男善女の手松明に移して鵜の瀬まだ数千人が行列する。
遠敷川の大護摩に点火したあと、読経の中、宮司が「お香水」を川に注ぐ。その水は奈良二月堂の「若狭井」に十日かかって着くのだという。このように素晴らしい行事を目の前で見られるのは果報者である。
惜しまれるは、たいまつでなく松明と漢字で書く方が臨場感が出た事だ。一筋という措辞は見たものでないと書けない。
これからも見たままに自分なりの視点を一点盛り込んだ句を期待したい。
少し時間が早いが、自分の主宰する結社誌の入稿の関係から投稿させて頂く。

愛らしく奥に白山梅の花　俊克

Anikó Papp 特選に選ばせて頂きます。
【愛らしく奥に白山】という基底部は写生が良く効いて、いい雰囲気です。この基底部の後、
【梅の花】という干渉部、季語が良く効いて、取り合わせがいいです。残った雪のある白い山と梅の花の色のすっかりと矛盾されているコントラストもいいです。素晴らしい写生、白い山に咲いている梅の花は大発見ですね。

三月

⦿愛らしく奥に白山梅の花　俊克
⦿甘辛く仕上げくぎ煮の春告げる　俊克
⦿風光る脚光浴びる除菌バス　俊克
⦿春の闇ライブハウスのコロナ着て　俊克
●ストレスが家族マスクの匂草　俊克
⦿たいまつを一筋注ぐ送水会　俊克
⦿驚いて花見団子のお亀堂　俊克
⦿感動し未使用マスク春花粉　俊克
⦿繰り返しハンカチマスク弥生山　俊克
⦿春便りイサダの浜の魚市場　俊克
●物種蒔くや右目の半分かな　俊克
⦿世相見て口鼻マスク官女雛　俊克
⦿感染がばらまき男花の冷え　俊克
⦿春花粉県議マスクのオークション　俊克
⦿菜の花やひろびろ望む筑波山　俊克
⦿訪れを心安らぐ春の花　俊克
●春祭り町内だけの飾り馬　俊克
⦿梅の香や映えて日差しの彦根城　俊克
●妖精の釣り鐘白く春の花　俊克
⦿王将の餃子弁当山笑う　俊克
●春蝶や砂沼の鯉の跳ねる音　俊克
●若布入れ玉子も入れてカップ麺　俊克
⦿春祭りコロナ退散疫神社　俊克
⦿ぶらんこも居ない子何処にコロナいる　俊克
●染井吉野早い開花の雨が降る　俊克
●九段下五輪霙の初桜　俊克
●鐘霞む市中感染現実味　俊克
●防波堤に真鯛描かれて春の海
⦿逆風の春の牡蠣小屋コロナかな　俊克
⦿イラストを春の渚のマンホール　俊克
●伊勢志摩の描かれし魚の春電車　俊克
⦿三度目の取引停止春疾風　俊克
⦿若桜茶屋の珈琲砂沼かな　俊克
●一輪が午後は八輪桜咲く　俊克
⦿桃の花古河を歩いて公方様　俊克
●フランスはコロナ戦ふ彼岸かな　俊克
●桜めで弁当買ふて夫婦かな　俊克
⦿菜の花や化石の森のまちおこし　俊克
⦿支笏湖の映る水鏡うららけし　俊克
●荒川の桜数輪堤亭　俊克
⦿引っ越しの上皇夫妻あたたかし　俊克
●風強く数輪咲いて初桜　俊克
●石室を入れる古墳や春の雲　俊克
●がんばれと春の善隣中華街　俊克
⦿桜の木平和通りの日立駅　俊克
⦿テセウスの船のコロナや春の月　俊克
⦿アビガンが春三日月の投与かな　俊克
●桜咲く四日遅いと爆心地　俊克
●ジグザグの幾何学模様春を呼ぶ　俊克
⦿帰国者のコロナひしひし木の芽風　俊克
⦿若者がコロナ掛かって暮遅し　俊克
⦿木蓮や家の水辺の筑波山　俊克
●鬼怒川の地面に垂れる翁草　俊克
⦿隔離され春の陸軍キャンプ座間　俊克
⦿あれこれと逆さ小枝の花見鳥　俊克
●春川や写真絵札のダムかるた　俊克

短歌

⦿肺炎を緊急事態宣言し
流行認定防ぐ正念場　俊克
⦿記者逃げて説明不足スタスタと
教えて欲しい首相の手洗い　俊克
⦿給食の納入止まりキャンセルに
食材余る緊急販売　俊克　
●卒業はスイートピーの花言葉
門出の簡素化心配コロナ　俊克
●円を買うリスク回避の活発化
円高突入ロンドン市場　俊克
●導入が宿泊税の財源に
追い打ちコロナの悲痛な声　俊克
●龍笛が蘭陵王の大祓
勢い戻す願い復興へ　俊克
⦿早咲きが春の息吹のチューリップ
マスク姿の新鮮空気　俊克
⦿ぼんぼりの知られ尾道千光寺
コロナ消毒迎える夜桜　俊克
●船下ろし早め春漁氷割り
覆う氷にぶつけてタグボート　俊克
⦿ポイ捨てが感染マスク廃棄物
火ばさみ使う密閉袋　俊克
⦿開始から株価急落感染し
自粛鎮める希望のオルベスコ　俊克
⦿薄ピンク見上げて空を江戸彼岸
城跡早く氏邦桜　俊克
●蝉の羽に寿命不思議なマーキング
突き止め蝉の生存証明　俊克