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多和田葉子「雪の練習生」

小野正嗣さんお薦めの小説である、多和田葉子「雪の練習生」は、ホッキョクグマのわたし、トスカ、クヌートの三代にわたるファンタジー小説。

 サーカスの花形から事務職、文筆家を経て「自伝」を書き始めるホッキョクグマのわたし。サーカスで女曲芸師ウルズラと伝説の芸「死の接吻」を成し遂げた娘のトスカ、その息子でベルリン動物園の人気者になったクヌート。ホッキョクグマが擬人化されて人間のように語る姿が愛らしい。

 その一方で、ソ連や東ドイツの共産圏の話、ロシア語とドイツ語と英語の言語間障壁、移民や亡命の問題、動物虐待の話など、ヘビーな問題も扱っていて、リアリズムを感じてほろ苦い。

 からだが大きくて白い毛並みで芸ができるホッキョクグマを見たくなり、童心に返って、動物園に行きたくなりました。もしかすると人間の言葉を話すクヌートに出会えるかもしれない。


 読書の音楽はサン=サーンスの組曲「動物の謝肉祭」。アルゲリッチやクレーメルが共演した演奏で♪

https://www.youtube.com/watch?v=9uL_whPVPzE

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