多和田葉子

言葉に興じること

多和田葉子『飛魂』(1998年5月6日初版)について

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梨水、亀鏡、煙花、紅石、指姫、粧娘、朝鈴……著者によれば、登場人物に与えられたこれらの特徴的な名前は、漢字を適当に組みあわせてつくられたという。そのため著者にすら読み方がはっきりしないものがあるという。漢字のイメージが組みあわさることで生じるもうひとつの新たなイメージ。漢字のイメージ形成力。

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日本のくらいくらい未来を見据えて〜多和田葉子『献灯使』書評〜

多和田葉子がノーベル文学賞のブックメーカー予想で名前が挙がったことがニュースになっていた。カズオ・イシグロといい、やはり民族性を問うたものや、多言語性というのは着目されるポイントなのだろう。

https://www.sankei.com/life/news/191003/lif1910030020-n1.html

 というわけで、今回、始めてnoteに投稿してみるが、タイムリーだったので、数年

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『雪の練習生』におけるアイデンティティーの探求

先日会った人が、
「自分を形づくらない人間はつまらない」と言っていて、
その言葉をきっかけにして、
アイデンティティーについて考えていた時に、
多和田葉子の「雪の練習生」という小説を思い出しました。

実在した、ベルリン動物園の人気者のホッキョクグマ「クヌート」に多和田葉子がインスピレーションを受けて書いた作品で、
「わたし」、わたしの娘「トスカ」、トスカの息子「クヌート」を主人公にしたホッキョク

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スキありがとうございます!
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『地球にちりばめられて』

「母語を話す人は母国の人ではない。ネイティブは日常。非ネイティブはユートピア。」

このセリフがなかなか頭から離れない。
とてもシンプルな言葉で発せられたセリフだけれど、自分がこの意味をちゃんとわかっているのかどうなのか、わからなくなる。

最初の一文を私自身にとっての母語、母国に置き換えてみる。
「日本語を話す人は日本の人ではない。」

このセリフがどんな文脈のなかで出てきたものなのかがわからな

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شكرا لك
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抜け道は外国語

日本語が、日本語なのに、通じなかった。

取引先の人と、電話で連絡を取り合っていた。先方が提示してきた請求書の金額が、契約した際の金額とどうしても合わない。まだ仕事をし始めて2か月だけど、先輩から引き継いだ仕事なので、電話をかけたりするのも私の仕事だ。先輩には逐一状況を報告し、アドバイスをもらっている。

電話での内容も、全て先輩に話し、メール画面も全て見せ、先輩とじっくり相談しながら先方に言葉を

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とっても嬉しいです!
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ちぐはぐの中に込められた本当のテーマとは?(ウサギノヴィッチ)

どうも、ウサギノヴィッチです。
 
 今日は僕の解釈じゃないことを披露したいと思います。その作品が難しいとかじゃなくて、書いてるなにかをより知りたかったから、自分で調べてみました。
 
 今回の作品は、多和田葉子の『盗み読み』です。
 主人公の女性は、色々な職業の男性と会いますが、その会話はちぐはぐです。ただ、その会話には、実は意味があって、ジェンダーのことについて話しているのでした。
 
 実は

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ありがとうございます!
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多和田葉子『献灯使』に関する分析

おはようございます、チェ・ブンブンです。
今回は、大学時代に研究した多和田葉子『献灯使』のレポートを掲載します。

ブンブンは大学時代、映画ゼミではなく、リービ英雄教授の文学ゼミに所属していました。そこで中上健次や三島由紀夫の小説の研究を行なっていました。その授業の一環で、多和田葉子『献灯使』を読み込む回がありました。非常に難解な小説でしたが、小説ならではの魅力に溢れていて非常に楽しい授業でした。

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また遊びに来てください
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昨年面白かった本

2018年は本を100冊ちょうど読みました。今年はもう少し沢山読めるといいな、と思っていますが、どちらかというと集中力を研ぎ澄まして、きちんとテキストを読み取り味わう読書を目指した方がいいような気もしています。

舞台「豊饒の海」を見る前に三島由紀夫『春の雪』『奔馬』を再読(『暁の寺』『天人五衰』もこれから読みたい)、舞台「メタルマクベス」disc1を見たら、あ、原作当たっておくべきだった、とdi

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読んで下さってありがとう♪♪♪
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岩波書店編集部編 『翻訳家の仕事』

★★★★☆

 2006年に岩波新書から出た本書は、雑誌『図書』に掲載されていた「だから翻訳はおもしろい」という連載をまとめたものです。名だたる翻訳家総勢37名が翻訳について語っています。

 主な翻訳者は亀山郁夫、柴田元幸、高見浩、野崎歓などなど。今年、全米図書賞翻訳部門を受賞した多和田葉子や、村上春樹を英訳しているアルフレッド・バーンバウムもいます。

 翻訳というのはどういう行為なのか? 考

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読んでない本の書評55「献灯使」

136グラム。内容を読んだ後で表紙を見返すとちょっと戸惑う。え、ハシビロコウ?もっと柔和な感じの鳥じゃないんだっ?

 目に見えるもの、肌に触れるものみなしっくりこないという違和感が連綿と続く。さて違和感が伝ってくるばかりで、世界がかすんで見える、苦しい困ったな、と思いながら読んでいく。
 閉塞感にいらだちつつも、最初は不気味な印象すらあった極端に身体の弱い子ども、無名のことが、気付けば少し好きに

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