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やりきれない世界で生きていく。Netflix『ボージャック・ホースマン』の魅力

Netflixはオリジナル作品に力を入れていますが、
その中の一つのオリジナルアニメ、ボージャック・ホースマンが面白いので紹介します。

まあ観てもらうのが一番早いんですが。

あらすじ

映画の『ズートピア』のように擬人化された動物たちと、普通の人間らが一緒に暮らす世界で、そこのハリウッドが主な舞台。
主人公は90年代に劇中のホームドラマ(フルハウスみたいなの)の主人公を演じてセレブになったが、今は落ちぶれている中年の馬の男。
他にも色々な人間(マネージャーの猫とか、友達の明るい犬とか、居候してる人間とかとか)が出てきて彼らとの人間関係が描かれます。

アニメではあるけれど、とても大人向けです。それは下ネタや言葉遣い的な意味と、エピソードに込められたメッセージの性質としての意味の両方でです。

現在シーズン5まで製作されていて、シーズン6もすでに決定している人気シリーズです。わたしは現在シーズン3まで視聴済みです。

何が面白いの

観始めた人はまずギャグを浴びせられます。それこそもう息もつかせぬ間に。
ギャグを説明することほど悲しいものはないですが、例えば動物ギャグは隙間があるとみればどんどん挟まれ、「猫が仕事机の上に猫じゃらしを置いて遊んでいる」から、「ビーフステーキを頼んだら持ってきたウェイトレスが牛だった」などというダークなものまであります。
他にも不条理ギャグ、メタネタ、本物のセレブが本人役として出演などなんでもありです。
セリフ自体も間にギャグを挟んでいきながらかなりテンポよく進んで行くので、1話約24分という短さもあいまってサクッと観れます。

そしてキャラクター。主人公のボージャックは豪邸に住む女癖の悪いセレブで、落ちぶれて過去の栄光に縛られながら怠惰な生活を送る、第一印象は嫌なやつです。
他の登場人物も同じくらい一癖も二癖もあるキャラクターばかり。
そんな彼らと私たちの間には何も共通点がないように思えるのに、エピソードを進めるうちにどんどんと彼らに共感し、寄り添いたくなってしまうのです。
一癖も二癖もあるその彼らの言動や、明かされる過去などから滲み出る人間くささが大きな魅力です。

そしてこのアニメの面白さの軸は、メッセージ性の強さにあります。
1つのエピソードの20分あたりまで、ギャグを繰り出しながら話が進んでいくのがたいていのパターンです。
なのに最後の約5分で、急に今までの展開が収束し、観ている私たちに重く突き刺さり、考えさせられることになる脚本は見事というほかないです。
しかも扱う話題は時に非常にセンシティブで、やりきれない問題もあるにも関わらず、根底はあくまでギャグとして、こちらに拒否感を与えずに飲み込ませてしまう巧さがあります。


さて、ここまで読んだならいっそ本編を観た方が早い気もしますよ?
正直シーズン1の前半くらいは登場人物の紹介みたいな面もあるので、なかなか魅力が伝わらないかもしれないですが、観進めるうちに物語として深みを増していく楽しさがあります。
書いておくと、シーズン2は社会へのメッセージ性の強いシーズンで、対してシーズン3はアニメとして実験的なエピソードが多いシーズンです。シーズン1の最終話もすごかったですけどね。

ちなみに、ボージャックが劇中でかつて主演を務めたホームドラマ「馬か騒ぎ」のオープニング映像も配信されています。ちゃんと製作年が劇中の設定通りになってるのが細かい。


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