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「5年放置すれば問題は時間が解決してくれる」Community Drive 第1回再録 高橋征義さん⑦

お金だけポンと出してスポンサーになってもあまりメリットが無い

鹿野:規模が大きくなってくるとそのあたりはなかなか難しいですね。
高橋:規模が大きいのと、やはり仕事でやるのには向かないのかなと。好きな人が集まってわいわいやってるのと、企業としてきちんとしないとというところの切り分けがすごく難しいです。
スポンサー担当の対応に関しても、企業が企業として対応するのとちょっと違うわけですよ。その辺のニュアンスまで汲み取ってもらってっていうのはできるところとできないところとあるので。そういうところに関してはある程度まで(イベント会社に)頑張っていただいてすごい助かったところもあるんですが。
鹿野:お察いいたします。
高橋:難しいですね。
法林:この辺は特にやっぱり、RubyKaigiみたいに規模が大きくなってくると、おそらくスポンサーとして関わってこようとする企業にも、コミュニティのことをすごい分かっている会社もあれば、そうでない会社もたぶん来るはずですからね。コミュニティの空気感みたいなものが分かってるかどうかで全然違います。
高橋:でもRubyKaigiは割と分かってる会社さんがすごい多くて。
鹿野:そうじゃないと逆に協賛しづらいでしょうしね。
高橋:協賛の金額もだいぶ上がってしまってるので、おいそれと協賛することができないみたいなものがあるのかも知れませんが。
法林:いいスポンサーさんがついてくださってるっていう感じですか。
高橋:そうですね。逆にいうとそれぐらい頑張らないとスポンサードするメリットがないのかしらっていうのも感じます。積極的にRubyに対してアピールするぞっていう会社の姿勢がないと、単純にお金だけポンと出してみたいな感じだと、あんり協賛するメリットがないのかもしれません。
法林:その辺もコミュニティイベントは面白いとこですね。普通にお金を出すだけではない、ビジネス系のイベントとはその辺が違いますね。論理が違うようなところも感じますね。

5年放置すれば問題は時間が解決してくれる

鹿野:高橋さんは青空文庫にも関わられているそうですが、そちらのお話も伺わせてください。


注「青空文庫」:著作権が消滅した作品や著者が許諾した作品のテキストを公開しているインターネット上の電子図書館。http://www.aozora.gr.jp/


高橋:この前青空文庫さんの20周年記念イベントで少ししゃべってきたりしたんですが、やっぱり20年やってるコミュニティは違いますね。
鹿野:どう違うのでしょうか?
高橋:青空文庫自体がすごいアクティビティを高めてなんとかするというよりも、とにかく持続させる、あるものをしっかり残していくという性格なので、問題の解決の仕方が全然違う。多少問題があっても時間が解決するところがあるのかなと感じています。問題も5年間放置すればそのうち対策が決まったりしてどうにかなるだろうみたいな。
鹿野:5年間というのはすごいですね。今始まったばかりのコミュニティにとって5年というのはとても長いです。
高橋:5年は言い過ぎかもしれませんが、年単位で物事を考えるというか、そんな時間軸はあんまりネットのコミュニティや技術系のコミュニティにはなかった発想だったので驚きました。
法林:ないですね。ネットのコミュニティはすぐ解決しないと気がすまないような人たちばかりです(笑)。
高橋:すぐに解決するのが大変なことというのもあると思うんですよ。
法林:実際にはそう。むしろ解決しないことが多いんじゃないかと思うんだけど。
高橋:フラッと参加した人があれもこれもやったほうがいいというような話をしても、「いやでもすぐにこうするのはどうなんだ」という話になったりするわけですが、ずっとやってるとどうすればいいかは自ずと決まってくみたいな感じで、そういう問題解決の仕方が斬新だなと。斬新というか、昔は普通はそうだったというか。
鹿野:時間が解決してくれる。
高橋:時間も解決してくれますし、そういう速度感で運営をしてもいいんだと。
鹿野:急ぎすぎない。確かにネットのコミュニティというのはとてもスピードが速いという印象がありますね。
法林:そうですね。ネタの消費スピードみたいな言い方をするといいのかもしれませんが、コミュニティに限らずネット上のできごとは、ものすごく早くなったじゃないですか。1ヶ月ももたないような話が普通にある。次の日になったら別の話が出てくる、というようなことがありますが、コミュニティの運営はそうではないよな、みたいに思うことは確かにあります。
高橋:もちろんずっと放置していいわけではないので、少しずつでも前進というか進展させる必要はあるのですが、最終的には3年とか5年後に解決できていれば、実はそれでよかったのではっていうような考え方は、斬新な感じがしましたね。
法林:青空文庫はどんなコミュニティの構成になっているのでしょうか?
高橋:主に、入力する人と、入力されたものを校正する人がいます。

注「入力する人と、入力されたものを校正する人」:青空文庫では両者を合わせて耕作員または工作員と呼んでいます。

法林:あとは読者がいるという感じですね。
高橋:それをうまく回すために、運営というか、サポートをしている人たちというのもいます。

注:詳しくは「青空文庫のしくみ」http://www.aozora.gr.jp/aozora_bunkono_shikumi.html をどうぞ。

法林:ではそのコミュニティの中で何か問題が起きたとしても、そんなに解決を急がないんですね。それはどうしてそうなったんでしょうか。自然にそういう具合になってったんですかね。
高橋:たぶん自然にそうなってたんじゃないかなと。
法林:長くやってるとそうなるんですかね。長く続けられてるところはそうなるのかも知れませんね。もしくはそういう特性になると、長く続けられるということなのかもしれません。
高橋:青空文庫も、最初始めたメンバーの中で、中心的に動いていた富田さんがお亡くなりになられてしまったので、なので、それ以外の人たちで回していくことになっています。
青空文庫は、あまりちゃんとした法人とかは作ってないんですよ。あくまで、入力する人や校正したりしている人が主役であって、それをお手伝いしてる運営、運営というよりもほんとにお手伝いしますみたいな感じ。そうやってる割にはちゃんと毎年会計報告も出してて。
鹿野:真のコミュニティというか、すごいですね。
高橋:長く続いてるコミュニティはさすがに違うなと思うところもあれば、いやでももう少し早く進めるようにできるところもあるような、とと思うところもあったりします。
でもそれを早く進めよう、良くしようとしてうまくいかなくなったりするよりは、ゆっくりでもいいから着実に残すべきものを残していくっというようにやればいいというのが、とても新鮮でした。
私が関わり始めたのはまだ数年ぐらいなんですよ。
法林:新参者なんだ。
高橋:全然新参者で。
法林:高橋さんも青空文庫のコミュニティでは新参者なんだ。
僕はずっとjusのセッションでいろいろな団体の方とお話をしているんですが、解決方法というか、何かに対するやり方が、コミュニティによって全く違うので、それはとにかく違うんだなということだけがわかっていることで。
しかもコミュニティの運営に正解はないじゃないですか。技術情報との大きな違いはそこで、正解がないので、どのやり方が正しいっというモノでもない。とにかくいろいろ、いろんなやり方を聞いて、知っておいて引き出しを増やすっていうのかな。そういうことをやっておくのが役に立つのかなと、なんとなく思っています。そういう意味でいろいろなコミュニティのお話をこの番組で聞いていけたらと思っています。
鹿野:楽しみです。
法林:はい。大体こんなところですかね。ということでですね、初回のCommunity Drive、この辺りで締めたいと思います。今日は高橋征義さんをゲストにお迎えしました。本日はどうもありがとうございました。
高橋:ありがとうございました。
鹿野:ありがとうございました。

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