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『不適切にもほどがある!』の小川さんを見ると思い出す会社の先輩がいる

3月末までTBSで放送されていた、クドカン脚本の『不適切にもほどがある!』。
年間で片手で数えるほどしかドラマを見ない私も、毎週楽しく視聴していた。

物語は、阿部サダヲさん演じる主人公・小川市郎が、1986年から2024年にタイムスリップするところから始まる。

コンプライアンス意識の低い“昭和のおじさん”の市郎からは、令和ではギリギリ“不適切”発言が飛び出す。
しかし、そんな市郎の極論が、コンプラで縛られた令和の人々に考えるキッカケを与えていくことに。

「不適切にもほどがある!」公式サイト

コンプラ完全アウトながら、芯を食った発言をしていく小川さんを見るたびに、私の脳裏にはある男性の姿が思い浮かんでいた。

その男性は、同じ会社の他部署の先輩。
50代半ばであるが、管理職になることを拒み続け、今も現場の第一線でプレイヤーとしてバリバリ活躍している。
他部署ながら、私とは多少仕事で関わりがある。

大きい体格に、コワモテ、色黒の顔、イカついオーラ。
外見のイメージに違わず、仕事のアウトプットが悪いと、かなり厳しい言葉を投げられる。
私ももちろん何度か怒鳴られたことがある。

私はその先輩のことが苦手だった。
実際、先輩のいる部署に仕事のお願いに行く際は、その先輩がいる時間帯を避けていた。

今年の2月。
宮崎県に6日間出張に行くことになった。
仕事内容は別だが、その先輩も宮崎に滞在していた。

出張初日に別の先輩を交えて3人で、4日目にサシで飲みに行った。
飲み会中に、私の恋愛事情の話になった。
私の会社では、「恋愛や結婚の話はデリケートな話題だから、飲みの場を含め職場では話題に出さないように」と人事からお達しを受けている。

実際このルールに、私はかなり助けられていた。
私は今年27歳になるが、交際経験が全くない。
恋愛系の話を振られても、何も返すボールがないし、相手の価値観が私と相容れない場合には、「いい歳して恋愛経験もないなんてww」と、馬鹿にされるリスクも秘めている。
またそのリスクを回避するために、「学生時代ちょっとだけ恋人がいたことがあるんですけど、すぐ別れちゃいました〜」といった嘘をつくのは、「自分が何か悪いことをしたわけでもないのに、なんで私の方が嘘をつかなければならないのだろう」と、個人的には結構精神的に磨耗する。

上記の理由から、私は交際経験に関して嘘をつきたくたいため、私は先輩にも自分の身の上を正直に話した。

「女が好きなわけじゃないんだよね?良かった〜〜」
先輩はこう言った。
完全コンプラアウトである。もちろん良くない。

ただ恋愛経験のない私を、馬鹿にするようなことは一切なかった。
この反応については、特段以外ではなかった。

先輩は、仕事での対応が悪いとすぐ怒るし怒鳴る。
怒鳴るのは確かに良くない。
しかし、自分の機嫌が悪いから怒ったり、理不尽にキレることは、これまでも全くなかった。

飲みの場で私の話を聞いた先輩は、
「(私の本名下の名前)はさ、自己評価がちょっと著しく低いからさ。
自分のことを好きな状態じゃないと、他人に興味が湧かなくて、相手のことを好きになる気持ちも生まれてこないと思うのよ。
これまで休みの日に、一人で旅行に行ったり、飲みに行ったり、もちろんそれはそれで楽しく過ごしていると思うんだけど。
でも、二人で行動を共にすることにも、一人で過ごすこととはまた違った楽しみがあるからさ。
それを(私の下の名前)にも経験してほしいと、俺は思うよ」
と言われた。
アルコールが何杯も入った状態とはにわかに信じがたい、かなり芯を食ったことを言われ、私はただひたすら目を丸くして驚くことしかできなかった。

この先輩は誰よりも、部署が違う私でさえも、他人のことをよく観察していて、気にかけているのだと思う。
愛情のアウトプット方法が時代に全くそぐわないため、個人的には誤解されてもったいないなあと思ってしまう。
ただ、他人の生き様にあれこれケチをつけるのもそれはそれで違う気がするし、これが先輩の社会人としての生き方なのだろう。

2月にちょうどそんなことがあったので、
「コンプライアンスという規律ができて、気持ちが楽になったり、過ごしやすくなったりした部分はもちろんあるけれども、昭和的な距離の詰め方だからこそ、心を開けることもあるよなあ」
と思いながら、毎週「ふてほど」を見ていた。

実際、学生時代には「昭和的コミュニケーション」と決めつけ、全く理解しようともしていなかった、会社の人と終業後に飲みに行くことも、ここ最近はちゃんと意義があるもんだなと思うようになってきた。
(無理矢理強制参加や、女性はお酌といった文化はもちろん良くない。)
先輩と宮崎で飲みに行ってからは、腹を割って話した影響もあって距離が縮まり、仕事が頼みやすくなった。

秋津くんと同世代の平成生まれの私も、価値観を令和にアップデートしながらも、昭和のいいところを取り入れて、今後の人生を生きていきたいと思っている。

そんなnoteを書いていると、先輩から「あした釣りに行こう」というLINEが来た。
私は、
「お誘いありがとうございます。
大変恐縮ではございますが、この土日は一人で新潟旅行に行っているため、参加が難しいです。
また機会があれば、よろしくお願いいたします。」
と返信した。
先輩からは、「すご!行動的!!」という返事が返ってきた。

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