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渋谷の雑踏で波の音が聞こえたら ソフィ・カルの《Voir la Mer(海を見る )》

今回は2019/2/2〜2/9で上映されるソフィ・カルの《Voir la Mer(海を見る )》について。

《Voir la Mer(海を見る )》は、海を見たことがない人々が海を初めて見たときの様子を記録した作品。日本では2013年に原美術館で開催された『ソフィ・カル - 最後のとき/最初のとき』に出品されていたので見たことある人もいるかも。

わたしが観に行ったのは初日の2019/2/2土曜日。前日の美術手帖のツイートで上映を知った。

いつもは賑やかなCMは鳴り止んで、波の音だけが聞こえるスクランブル交差点。しばらくすると、海を眺めていた人が振り返り、こちらをじっと見つめる。涙を浮かべる人、なんだか嬉しそうな人、無邪気に笑う人、表情を読み取れない人、それぞれにいろんな表情が見える。

どこまでも続く水平線に絶え間ない潮風、繰り返す波音に無限を感じたりしてるんだろうか、とロマンチックな想像をめぐらしたあと、いや、潮風で目に砂が入っただけかもしれない、と意地悪に考えてみる。

ソフィ・カルの作品は、作品に虚構が含まれている可能性が最初に示されている。だから簡単には感傷には浸れない。見ることと読み取ることにとても自覚的になる。

ハチ公広場付近には今回の上映を見に来た人が数十人集まっていた。みんな同じ方向を見つめているものだから道行く人もつられて上映を見始める。「なんだビズリーチか」と、スポンサーの名前を見つけてつぶやく。当然その反応だよねと思いながらアート好きのわたしとしてはちょっとがっかりする。ソフィ・カルの名前くらい覚えていってと思ったりするけれど、わたしもスクランブル交差点のCMで初めてみたバンドの名前は覚えてない。なので名前は覚えなくてもいいです。ただ、見た光景は覚えててほしいな。

わかりやすさに囲まれた生活のなかに、意味の定まらない美しいものがある、というのはなかなか良いものです。

#アート #渋谷 #スクランブル交差点 #海 #映画





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