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格闘技のプライミング・ストラテジー

今回は格闘技のプライミングストラテジーを紹介します!

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プライミングとは?

プライミングとはホルモン・プライミングのことです。試合当日にウォーミングアップを含めてテストステロンとコルティゾールを中心にホルモンレベルを最適化していくことです。このホルモンの最適化によりパフォーマンスが最大化されます。但しこの最適化の際に特別な食事や薬物を摂取する必要はありません。プライミングはエクササイズや映像、音楽などでやっていきます。

ここで疑問となるのが果たしてやる意味があるのか?です。答えは”今までの積み重ねがなければ意味がない”です。試合当日のプライミングは今までピークパフォーマンスを出すために積み重ねてきたものが確実に出せるようにするためのものです。なので、どれだけプライミングをやろうと積み重ねがなければ、プライミングでのパフォーマンス向上も期待できません。

もちろんこういったことを必要としない選手もいます。Tim Ferris Podcastに出演したWWEのTriple Hは過去にFloyd Mayweather が世界戦をする際のロッカールームに入った時にただただ寛ぎ、歓談をしたと言っていました。Triple H自身も気を使い10-15分で済ますつもりだったらしく、何度もロッカールーム去ろうとしたのですが、Mayweatherは”やるべきことをやったんだから、今ごろしのごの言ってももう遅い。やるだけ。”といってそのままずっとTriple Hと会話を楽しんだと言っていました。

ウォーミングアップと何が違うの?

プライミングは一日かけてやっていくため、試合前に行うウォーミングアップはプライミングの一部となります。

格闘技のプライミング・ストラテジー

では、本題の格闘技のプライミング・ストラテジーです。今回はS&Cとしての役割からです。試合当日、自分は基本的に選手の側に要られません。入れるのは基本的には所属ジム関係者だと思います。もちろん契約形態によっては入れると思いますが、やることは同じだと思います。なので、今回は基本的に自分が側にいられない際に選手やコーチ陣にやってみるといい提案です。

1)温度の管理:

筋肉の体温が上がることで、筋肉から生み出されるパワーが向上します。Marshal PW el.,al は10人のアマチュアサッカー選手の2つのグループに分け、ウォームアップ(FIFA11+)前後での筋肉の温度を測定して、アイソキネティックマシーンで膝関節のトルク/回転力と筋収縮率を調べました。筋肉の温度が上がったままのグループは回転力を向上することが出来ていた報告が出ています。ただ下がった項目も合ったみたいなのでここに関しては注記しておきます。

日本でも筋肉を冷やしてはいけないという迷信めいたことが言われていますが、正しいと考えられます。なので、まず試合前に体温を下げ過ぎない為に室温や服を考える必要があります。基本的に格闘技は室内競技でエアコンがあるため冷房や暖房もあり温度を調節しやすいと思いますが、何らかの形でウォームアップで温めた体が冷えないようにする工夫は大事だ、ということです。またプロの場合は入場があり、相手選手の入場を待つ時間が長い可能性もありますし、その際にも何か工夫が必要になってくるかもしれません。選手達にとってはあっという間にコールされ、試合開始のゴングになる感覚があるかもしれませんが、なるべく体を冷やさない工夫をすることが大事です。

2)ポジティブな音楽・ビデオ・バーバルフィードバック

格闘技の試合の場合、自分の番がいつ回ってくるかわからないため、ポジティブな音楽、ビデオ、そしてコーチ達からのポジティブな声掛けはテストステロン向上に役立ちます。出来れば試合に向けての準備期間に少しずつプレイリストを作っていって勝負音楽や勝負ビデオ(自分のハイライトや他の選手たちのハイライトなど気分が見て気分が上がるビデオ)のリストを作成しておき、試合3-40分前から使用していくといいでしょう。

3)ウォームアップ

いつウォームアップを始めるかは、試合の順番によります。だいたい45-60分ぐらい前から徐々に初めていき、ダイナミックストレッチやエクササイズ、簡単なプライオメトリクスなどミットや実践的なテクニックを始める前の15-20分を使ってフィジカル的なことをするといいと思います。もちろんいつ始めるかなどはコーチや選手たちの好みもあるので2時間前や3時間前から始めてもいいと思います。

4) PAP:Post- Activation Potentiation

PAPは80年代から旧共産圏の国々でオリンピックスポーツ中心に使われ始めたテクニックです。実際の試合の前に高重量や高強度のウェイトトレーニングやプライオメトリクスをすることでフィジカルパフォーマンスを最大化する手法で東ドイツの陸上チーム、特に投擲の選手たちが使い、良い成績を残していたようです。もちろん当時はドーピングの真っ盛りでしたが、ここでそれには言及しません。またドーピングへの処罰が厳しくなったいま、こういった小さなことでパフォーマンスの最後の最適化は非常に大事になってくるでしょう。ただし何度も言いますが、試合当日までの積み上げが一番大事です。さて、格闘技の場合はリングやオクタゴン、または畳など場所は様々あると思いますが、プロ・アマ問わず試合開始まで少し時間があります。なので、その少しの時間を利用してプライオメトリクスをしてみるといいでしょう。ここでのエクササイズはポゴジャンプを3x20、レストを10-20秒にしてみてどうでしょうか?自分がサポートする第49&51代OPBFバンダム級王者の栗原慶太も試合後に前回の試合でやってみたと言ってくれました。どうやら自分がウェイトトレーニング中にPAPの話をした時のことを覚えていてくれたみたいで10-20回ポゴジャンプを試合前にしていたみたいです。これがどれだけ役立ったかはわかりませんが、試合結果は3RでKO勝利、第51代の王者に返り咲きました。

最後に

格闘技のプライミングストラテジーいかがでしたでしょうか?何度も言いますがこれは試合までに積み上げてきたことの最適化です。積み上げてきたものがない選手が使っても仕方がありません。なので積み上げてきた選手は最後の総仕上げに計量後、最後の24時間を大事に過ごしてみてください。

以上!

参考文献:
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Jeffreys, Ian. "Warm up revisited–the ‘ramp’method of optimising performance preparation." UKSCA Journal 6 (2006): 15-19.

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