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初めての文学フリマ【これは日記】

初めて文学フリマに行った。文フリは、言ってみれば「文学好きの集まる大人の文化祭」。初めて会場に行って体験して、こんなにもたくさんの大人たちが、生活と仕事の合間の時間を使って、自分の文章を人に届けるために熱量をもって活動してるんだと改めて知って、なんだか不思議な気持ちになった。本は本屋や図書館以外にもあるし、なんなら自分で作ることもできる。それを知ることができた初めての文学フリマだった。

一応私も「文字書き」側の人間ではある。でも、これまで自分の本を作るなんて、本当に、1ミリも考えたことがなかった。誰が読むの? とも思っていたし、できるわけないじゃん、とも思っていた。だから文フリも自分とは違う世界のものだったし、正直行きたいと思ったこともなかった。
でもnoteの知っている人たちが同人誌を作っていたり、出展していたりするのを見て、ああ、できないことじゃないんだなぁ、と思うようになった。そして文フリを初体験して、ああ、できるかできないかじゃなくてやりたいかやりたくないかだし、やるかやらないかなんだ、とハッキリ感じた。

だってあそこ、すごいんですよ。一人ひとりのスペースなんてすごく小さいんだけど、そこにギュウギュウに、自分の世界を詰め込んである。熱量が、足し算じゃなくて、掛け算で会場に居座っている。だから初めて行った人は、実際の人の数より(実際の人の数もすごかったけど)、その密度にあてられてしまうんじゃないかなと思った。会場に入ってしばらくは、情報と熱量の洪水でしばらく呆けてしまったもの。(帰宅後はひどい頭痛もおまけでついてきた)

表現をやっている人、やっているだけじゃなくて続けている人。みんな総じてすごい。本当にすごいよ。

そうなってくると、私もやっぱり文字書きの端くれだから、「人生で一回くらい、自分の本を……」なんてことも、やっぱり頭を過らないわけじゃない。でも、文フリまでの道のりを想像したら果てしなさ過ぎて、どうにも現実味がなかった。そしてあそこに座って売り子をするのも、誰も来ないかもしれない恐怖、一冊も売れない恐怖を抱えながら最後までやり切るのも、自分には難しく思えてならなかった。そう思うと、あの会場にいる人ひとり残らずすべての人に、拍手を送りたい気持ちになった。すごい、マジですごいです。

でも、妄想するだけ。すべては妄想から始まるから。妄想狂を自負する私だけど、これまで自分の本を妄想したことはなかった。たぶん、そういう願望がなかったんだと思う。でも、自分の本を作ったり文フリに出展したりする人たちを目の当たりにしたことで、妄想する段階に来た。新しい世界だ。
自分が本を作るならそこに何を書きたい、いや、何を残したいか。どんな字体で、どんなデザインで、どんな紙で、どんな表紙にしたいか。イラストは? 写真は? 少し考えるだけで決めることが無限に出てきた。ああ、こりゃあ無理だ、と思った。でも、ちょっとワクワクもした。

そういえば少し前に実家に帰った時、亡くなった母の本棚を物色していたら、俳句の合同誌を見つけた。母は生前俳句をやっていて、おそらくは結社のようなものにも入っていたらしく、その合同誌には母の俳句と短文が数ページ載っていた。私が内容を理解できたか否かはともかく、本人がいなくなった後もこうして本人の言葉が残る。それを目にする人がいる。自分の本を作る、また別の意味を感じたりもしたのだった。



最後に、この日の戦利品を簡単に紹介。

デザインも紙も製本も三者三様で楽しい

■スピッツ短歌+短文アンソロジー『犬になっちゃう紙 vol.4』
スピッツファンの方々が、スピッツの作品に関する短歌や短文を寄せた本。見つけた時、わああ、先人がいるー!って思っちゃった。私も自分の推しに関する文章をnoteに書き散らかしているし、最近は短歌にハマって推しについて詠んだ短歌をあちこちに撒き散らかしているので、そうか、こういう本を作れるんだなぁと、勝手ながら背中を見せてもらった気分だった。

■『SOME OF THEM OF ZINE vol.4』
会場に行く前から、短歌の本と批評の本が欲しいなと思っていて、これはサブカル系の批評本の島をぐるぐるしていた時に見つけた本。推しに関する批評本はちらほら見かけたのだけど、アイドルやアニメに寄ったものが多かったから、音楽関連のトピックが中心のこのZINEにあった見出し「『推し活』の功罪特集」を見つけた時は「これだ!」と思い即購入。功罪、ほんとにあると思うんですよ。礼賛ばかりしていてもね。批評本は、きっとフラットな意見を聞けるのでは、と期待して。

■小泉スロウ 短歌集『もうちょっと寝たい。』
いいタイトルですね。私、毎朝思ってます。「もうちょっと寝たい」。コンセプトが、「コンビニで買えそうな短歌」とのこと。少し中を読ませてもらったら、とても生活で、何気なくて、でも気づかなかった視点で、クスッとできて、コンセプト通りの短歌集だなって思った。短歌って難しいものも多いから、こういうものが一冊手元にあると、肩の力を抜いて楽しめそうな気がしていいなと思い、購入。

気になる本が本当にたくさんあって、私が富豪だったらもっと見境なく購入したと思うんだけど、あいにくそうではないので、控えめな、でも満足のいく、戦利品三冊となりました。

前日ギリギリまで行くのを迷っていたけど、行って良かった。
とても楽しい体験でした。


#文学フリマ #エッセイ #日記




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子供の就寝後にリビングで書くことの多い私ですが、本当はカフェなんかに籠って美味しいコーヒーを飲みながら執筆したいのです。いただいたサポートは、そんなときのカフェ代にさせていただきます。粛々と書く…!