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浅岡美恵(2009)編著『世界の地球温暖化対策ー再生可能エネルギーと排出量取引ー』学芸出版社

かなり古い本だが、かつてどのような議論があったのかを検証するのも大切な仕事である。学生たちに気候変動・環境・エネルギー政治/政策を教える上で、重要なのは、気候変動対策を有効にするには「市場のルールを変えること」であり、残念なことに「人々の善意に頼る」方法はほぼ無力だということだ。

社会を変えようとするには経済の仕組みから変えなければならない。産業革命以降、化石燃料に依存してきた経済や社会の仕組みを、その根本から低炭素型に変えていこうとする動きが明確になっている。その根源には、科学の警告とともに、低炭素経済への世紀をかけた転換の機会は大きなビジネスチャンスであるとの認識がある。

浅岡美恵2009: p.8


概して日本人は制度設計が苦手である。それは、幼稚園から「ルールは守りなさい」と言われて育ってきたからかもしれない。ルールの中では最高のパフォーマンスを出すが、ルールを疑うことについては、苦手である。ルールを再構築することなど、さらに苦手であろう。

この本の中で、第1部の第1章を執筆した弁護士でもある千葉恒久は、以下のような叙述をしている。

温暖化対策は、国際社会からの圧力で嫌々ながら行う受け身の政策ではなく、エネルギー輸入コストの低減、政治経済の動向に影響されないエネルギー源の獲得、環境・エネルギー技術での世界市場制覇、新たな雇用分野の創出など、まさしく「野心的な」目標を実現するための経済政策なのである。

千葉恒久2009: p.31

日本人の学生はHot Spring(温泉:ぬるま湯)の中にいて、冒険することをしない、と批判を受ける。確かに、経済状況が苦しい中、大学とバイト先の往復でへとへとになってしまい、何か新しいことをやってみようなどという気にはなれない学生が多かろう。
しかし、同じことは日本企業の管理職にも言えるのではないか。失点主義の昇進競争の中で、これまで日本が培ってきた強い(と思っていた)分野に固執するあまり、新たなイノベーションの実装や、日本経済にとって有利なルール設定において、後手に回った感はないか。
今の日本に必要なのは、時代の変化に合わせた「挑戦」であり、「制度構築」への参加であり、若い世代のクリエイティブな感性をマネタイズする支援をすることだろう。
大学教員として、そのような若い世代を十二分に応援したいと思うし、挑戦する心、ルールの中での競争、ルールを変更することによる効果や影響の理解、そういうものを育むには、大人が枠の中に子供を嵌め込んではいけないということだ。
学習者が主体になる教育が必要なのは、まさにその点に集約される。


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