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あなたの贈与は、成立していないかもしれません。

今日は、贈与税について書いてみたいと思います。
贈与がどういうものなのか、これまでの行為が贈与として成立していたのか、この財産は誰のものとして認定されるのか、ということを理解して頂く内容となっています。
読んで心配になった方は、税理士に相談してみてください。
贈与であっても、贈与税がかからないケースもあります。
それはまた別の記事で書きたいと思います。

贈与税の申告期限

巷で言う「確定申告」は、通常は、個人の所得税の確定申告のことを指していますが、ほぼ同時期に申告が必要なのが、贈与税です。
2月1日から3月15日までの間に申告が必要です。

(贈与税の申告書)
第二十八条 贈与により財産を取得した者は、その年分の贈与税の課税価格に係る第二十一条の五、第二十一条の七及び第二十一条の八の規定による贈与税額があるとき、又は当該財産が第二十一条の九第三項の規定の適用を受けるものであるときは、その年の翌年二月一日から三月十五日まで(同年一月一日から三月十五日までに国税通則法第百十七条第二項(納税管理人)の規定による納税管理人の届出をしないでこの法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなるときは、当該住所及び居所を有しないこととなる日まで)に、課税価格、贈与税額その他財務省令で定める事項を記載した申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
相続税法第28条

贈与税が変わる

贈与税の申告も確定申告と呼びます(法人税の申告書なども、確定申告です。自ら金額を確定して申告することが確定申告ですので、本来は所得税に限った話ではありません)。
令和4年末に発表された税制改正大綱では、今後の贈与税の取り扱いが大幅に変更されることが記されています。

具体的には、令和6年以後の贈与から変わっていくようですが、改正点について触れる前に、基本的なことを整理してみたいと思います。
贈与税は、相続税法という法律の中で規定されています。
相続税法は、贈与税と相続税について規定されていて、税法の中では唯一、1つの法律の中に2つの税目が入っています(一税法二税目と言ったりします)。

贈与とはどのような行為か

贈与については、民法に規定されています。

贈与は、当事者の一方がある財産権を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
民法第549条

贈与者(財産をあげる人)と、受贈者(財産をもらう人)が、互いに財産の贈与についての意思を持っていて初めて成立します。

贈与が成立していないケース


例えば、次のようなケースは、贈与が成立していません。

・お母さんがこどものために、こども名義の通帳口座を作り、毎年、資金を移動させているが、こどもはこの事実を知らない場合

これは、よくあることだと思うのですが、この段階では民法上、贈与は成立していません。
この場合で、贈与を成立させるためには、次のことが必要です。

・こどもが財産をもらう意思を示していること。
・通帳や印鑑をこども自身が所有し、いつでも自由に引出ができる状態であること。

ドキリとしませんか?
一般的に、親がこどものために、こども名義でコツコツと貯めているお金は、その段階では贈与が成立していないのです。
税務署がこれをどう判断するかというと、あくまで、財産を贈与した人(先ほどの例では、お母さん)の財産であると判断します。
名義が異なるけれど、実質的にその人の財産と認定される預金のことを名義預金と呼びます。

では、どの段階で贈与が成立するかというと、実際にこどもがその金額を手にするときです。
「あなたも、結婚して大人になるんだね。これ、実はあなたが生まれた時から、このときのために、お母さんが少しずつあなたのために貯めてきたお金なの。これをこれからの生活で使いなさい」
そう言って、500万が貯まった通帳を渡したとします。
この段階で、500万の贈与が成立します。
65万円(500万 × 15% - 10万 = 65万)の贈与税が確定します。
贈与税は、贈与額が大きいほど、税率が高くなる累進課税制度を取っていますので、金額が高くなるほど高額になります。

このケースで、お母さんは専業主婦だったとします。
その場合には、お母さん名義の通帳は、お母さんのものではなく、お父さんのものだと認定されるケースが多くなります。
誰の稼ぎで形成された財産なのかが見られていくので、稼ぎがない人の口座は、別の家計を支えている人のものであると判断されます(旦那さんから奥さんへの贈与が成立しているケースは除きます)。
最悪の事態として、旦那さんが亡くなってしまった場合には、奥さん名義の通帳も、お子さん名義の通帳も、旦那さんの相続財産として相続税の課税対象になります。
相続税には基礎控除額があるので、財産がある程度以上ある人以外は気にしなくていいのですが、相続税の申告対象になる人にしてみれば、奥さんや子ども名義の通帳まで課税対象になるなんて、何かの間違いじゃないかと思いたくなる話です。
相続税も、財産の金額が高くなればなるほど、税率は上がっていきます。

以前にも、似たようなテーマの記事を書いていましたので、それぞれ読んでもらえると理解が深まると思います。




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