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170年前の想いを今に伝えるアンティークコイン。ロンドン万博記念銀メダル

はじめに

今回は日本で人気のイギリス製メダルからのご紹介です。
170年前に世界初の万博であるロンドン万博を記念して発行された銀メダルです。
アンティークコインの魅力がこれ以上ないほど込められたメダルです。
1枚に込められたストーリーをお楽しみ下さい。

<コインデータ>

名称:ロンドン万博記念銀メダル
発行年:1851年
発行国:イギリス
発行枚数:不明
グレード:NGC/MS62
市場価格:80万円~

ロンドン万博記念銀メダル‐アップ

ロンドン万博記念銀メダル‐裏面

<コインの概要>

1851年にロンドンで開催された万国博覧会を記念して鋳造された銀メダルです。
コイン鑑定機関NGCにてMS62という素晴らしい鑑定がついています。

表面にはヴィクトリア女王と彼女の夫であるアルバート公の肖像が、
裏面には座するブリタニアとそれを囲むヨーロッパ・アジア・アフリカ・アメリカの擬人像、そしてかしずいて冠を戴く女王の姿が描かれます。

表裏共に精緻なデザインが特徴のこのメダル。170年も前に発行された銀素材でありながら、輝きを失わず現代まで伝えられてきたことは奇跡的な事でしょう。
人気の高いイギリスコインであることから、資産保全にも適した1枚であると言えます。

また、このコインのデザインにはいくつもの「ストーリー」が込められており、歴史的な美術品としての価値も見逃せません。
是非手に取って見て頂きたいコインです。


<ヴィクトリア女王を支えた立役者、アルバート公>

ヴィクトリア女王の夫であるアルバート公は奔放である両親を反面教師にして育った誠実な人物で、財政面にも明るかったため、王室の財政改革において手腕を発揮していました。

世界初の国際博覧会である第1回万博であるロンドン万博の際は、ヴィクトリア女王ために万博を成功させようとスポンサー集めに各地を奔走したといわれています。

その甲斐もあって万博は大成功をおさめ、イギリスの権威は一層強まったというエピソードがあります。
表面に並び立つ2人の姿が一層特別なものに感じられる、素敵なエピソードです。

ヴィクトリア女王を描いた名作コイン・ゴシッククラウンはこちら


<すべてがイギリス王家の所有物!?イルカのモチーフ>

コインのモチーフによく見られる動物はライオンやユニコーン、ワシ、馬などです。イギリスコインに描かれる動物の代表は、王家の紋章に描かれるライオンや、聖ジョージの竜退治に描かれる馬と竜などでしょうか。

しかし、このコインの表面をよく見ると2頭のイルカが描かれています。
実は、イギリスの法令には「英国領海のイルカはすべて王家の所有物である」という記述があるのです。
この法令の始まりはなんと1324年にさかのぼり、2020年現在の国主であるエリザベス2世も、英国領のイルカ全てを所有しています。
イルカだけでなく、テムズ川の白鳥全て・領海のクジラ・チョウザメは王家の所有物であり、特にイルカ・クジラは王室の魚として親しまれています。


<天才デザイナー親子、ワイオン家2代の合作>

コインデザイナーは「ウナとライオン」で著名なウィリアム・ワイオンと、彼の息子であるレナード・チャールズ・ワイオンの2名です。
息子のレナードは父の仕事を受け継ぎ、世界中のイギリス属州で使われるコインのデザインを手がけた人物です。

名作銀貨「ゴシッククラウン」に自らのイニシャルを盛り込んだ事が有名なワイオンですが、このメダルにも彼の足跡がはっきりと遺されています。
裏面の擬人化された女神たちの傍に小さく男性の肖像が描かれているのですが、何を隠そう、この肖像こそウィリアム・ワイオン本人なのです。

ウィリアム・ワイオンは本メダルが発行された1851年に亡くなるのですが、息子のレナードは1854年に父を1面に描いたコインを手がけます。そしてその前日譚が、このコインの小さな肖像から見えて来る様な気がします。

ワイオンの他のコインはこちら↓


おわりに

如何でしたでしょうか。今回はこのコインに込められた3つのストーリーをご紹介させて頂きましたが、まだまだモチーフを読み解くことで秘められた逸話が現れる事でしょう。

こうした楽しみ方ができる事がアンティークコインの何よりの魅力です。

ホームページでもたくさんのコインをご紹介しております。是非ご覧ください!

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