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ローカルメディアは地域の中のあらゆるものをつなぐ媒介者。とよなか地域創生塾第7期「DAY7(Aコース) メディアをつくってみよう!」開催レポート

みなさん、こんにちは!株式会社ここにあるの神谷春菜です。2024年1月22日(月)に、庄内コラボセンター「ショコラ」図書館脇のスペースで、とよなか地域創生塾第7期のDAY7を開催しました。

10月初旬にはじまった「とよなか地域創生塾第7期」のイベント・メディアコースも第7回を迎え、最後のレクチャー講座となりました。

「きり〜つ。れい〜。」「よろしくお願いしま〜す。」と笑顔に包まれ和やかにスタート。

<とよなか地域創生塾って?>
豊中の「地域」を「創」り「生」かしていくための考え方と仲間が得られる豊中市主催の連続講座(ゼミナール)。全10回の約半年間をかけて、具体的にプロジェクトを実行できるような「知」と「仲間」を創っていきます。第7期を迎えた今回より「株式会社ここにある」が企画運営をお手伝い。これまでのとよなか地域創生塾らしさを引き継ぎつつ、新たなゲスト講師のみなさんをお呼びしたり、2つのコースに分けて実施したりするなど、新しい試みも取り入れて再始動しています。

イベント・メディアコースDAY7のテーマは「メディアをつくってみよう!」、というわけで「メディアと場の制作編集」をテーマに枚方で活動されている、合同会社PicnicWork代表の交久瀬 清香(かたくせ さやか)さんにお越しいただきました。

ローカルメディアを通してさまざまな人やものを掛け合わせることで、無限の可能性が生まれるのではないか。そんな希望が交久瀬さんのお話には込められていたように感じられた今回の講義。詳しくお伝えしていくので、最後まで楽しんで読んでくださいね!

では、DAY7スタートです。

文:神谷 春菜

編集者はまちの調整屋さん?

講義の前は恒例となりつつある近況報告チェックインからスタート。久しぶりに会う人同士も多く、大盛り上がりで終了。いよいよ講義がはじまります。

今回の講師の交久瀬さんは枚方市を拠点に活動していますが、豊中市と似ているところも多いようです。例えば大阪の北部に位置していること、中核市であること、大阪府人口4位と5位など。なるほど、なんとなく似ていますね。

では、2度の転職から「合同会社PicnicWork」を起業したという経歴をお持ちの交久瀬さんを深掘っていきましょう。

交久瀬 清香(かたくせ さやか)さん
大阪府枚方市生まれ・在住。佛教大学社会学部公共政策学科卒業後、枚方市役所都市整備部まちづくり推進課で勤務。
ローカルメディア「枚方つーしん」を運営する株式会社morondoに転職。主に広告担当から役員を経て、2018年独立。2019年に合同会社PicnicWorkを設立し、現在代表社員。「メディアと場の制作編集」をテーマに、枚方市を拠点にコワーキングスペース「ビィーゴ」運営、WEBや紙媒体の制作編集、イベントのディレクションなどを行っている。

2019年に立ち上がった「合同会社PicnicWork」は「あなたのあいかたになります」をコンセプトに、誰かのチャレンジに伴走し、応援する活動を行っています。「Web」と「リアル」を掛け合わせて事業を展開し、地域住民や行政職員、専門家やクリエイターなどを巻き込みながらさまざまなことに取り組んでいます。

「PicnicWork」の事業は、大きく分けて3つあるそうです。

①Web制作・Webメディアコンテンツ制作のデザイン事業
枚方に関わらず、幼稚園や保育園、商業施設、京阪電気鉄道株式会社関連の会社さんのホームページを作成しています。ほかにも枚方市の魅力を届けるフリーペーパー「ひらいろ」も制作しています。

②マルシェなどのイベント事業 
枚方市にあるくずはモールでは、毎月約60店舗ものクリエイターや雑貨屋が出店するマルシェ「くずはマルシェ」を開催しています。また、パンマルシェなど、テーマを絞ったイベントも行っているそう。前職では枚方にあるローカルメディアの「枚方つーしん(通称:ひらつー)」に関わっていましたが、そのつながりから京阪電気鉄道会社さんや関連企業さんとのご縁があったとのこと。また、駅前広場でのイベントや音楽ライブ、中之島のイルミネーションの企画などもやっているんですって。幅広いですね。

③コワーキングスペース事業
2019年から「やりたいことをかなえる場所」として枚方市駅近くに位置する商業施設「ビオルネ」の5階でコワーキングスペース「ビィーゴ」も運営中。高校生からクリエイターまでさまざまな人が集い、学び、交流しています。

今回も進行を務めた株式会社ここにある代表の藤本遼(ふじもと・りょう)も「コミュ力+共創力」養成講座をコワーキングスペース「ビィーゴ」で開催。参加者約70人と大盛況...!!!

その次を想像し、つながりを見出していく

「人と出会った時、その人が一番楽しそうなシーンを想像する」

そう語る交久瀬さんは、あらゆる人や事柄がつながっていく瞬間に立ち会ってきたそうです。今回はフリーペーパー「ひらいろ」とコワーキングスペース「ビィーゴ」のふたつからその瞬間や過程を教えていただきました。

まずは、枚方市のフリーペーパー「ひらいろ」からどのようなことが新しく生まれたのかをご紹介していきます。「ひらいろ」の掲載は、枚方市のお店や場所・人をリサーチし、アポイントを取るところからはじまります。その後、先方のお店や場所に行き、1時間程度の取材をし、密なやりとりを経てフリーペーパーに掲載していきます。

交久瀬さんは取材対象になる方と出会い、関わりあうなかで、取材する人の人柄や困っていること、得意なことを覚えておくそう。そして、その人が一番楽しくなるようなシーンを想像して提案することを意識的に行っているそう。取材をするだけではなく、それをきっかけにして別の価値や意味も提供していく。そういう入り口として取材やフリーペーパーを捉えているとのこと。

取材だけで終わらせるのではなく「話が面白い人だからコワーキングイベントで登壇してもらおう!」「販路拡大したい人だからマルシェ出店してもらいたい!」など、「ひらいろ」だけに留まらず、他の事業やイベントにもつなげていくのは、まさに編集的な動きですね。

現在関わっている「奥ひらプロジェクト」も、そういったつながりの中から関わるようになったプロジェクト。自分たちの取り組みや場所に来てもらったり参加してもらったりするだけではなく、出会った人たちの活動や団体に関わっていくという双方向的な関わり方も面白いですね。フリーペーパーだけではなく、イベントやマルシェを企画したり、コワーキングスペースを運営したりしたことで、提案できる内容もどんどん増えていったそうです。

ひらいろ:大阪府の北部に位置する「枚方市」には、豊かな自然やおしゃれなカフェ、歴史ある建造物がいっぱいです。そんな枚方市の魅力を、この街で暮らす方にも、そうでない方にも知ってもらいたい。そんな思いから「枚方市役所」「枚方T-SITE」「枚方文化観光協会」がタッグを組んで発行している観光フリーペーパー

コワーキングスペース「ビィーゴ」でも、いろいろな仕事や活動のやりとりがなされているようです。

そもそも、コワーキングスペースとは「Co(ともに)」と「Working(働く)」という2つの英語からできており、「ともに働く」という意味で「協働・共創の場」として使用されている言葉です。さまざまな形がありますが、コワーキングスペース自体は日本各地にどんどん広がっていますね。

「ビィーゴ」の会員になり、そこに通い続けることで「ビィーゴ」で働く人たちと仲良くなります。その後、プライベートで遊びに行ったり、仕事につながったりすることもたくさんあるそう。実際「合同会社PicnicWork」も、コワーキングスペースの会員さんからWeb制作や紙媒体の制作を受注したことも。コワーキングスペース内でお互いにできる仕事を請け負って、ともに仕事を回すことができるようになっているんですね。

場があることでつながり、公私問わずお互い助け合える関係性になれるというのが素敵です。

「場所を通じて、一生続く関係性ができるのが強みです」

場所がなくてもつながれるヒトやモノはあるかもしれない。だけど固定の空間があることでひとときのつながりだけではなく、一生ものの継続的な関わりになっていくのは感慨深いですね。人とのつながりでやりたいことを叶えることを実際に見て体験されてきたからこその交久瀬さんのお言葉。「合同会社PicnicWork」の事業もどこかですべてがつながっているように感じることができたお話でした。

ローカルメディアは地域の中のあらゆるものをつなぐ媒介者

これまでのお話からもわかるように、交久瀬さんは単にメディア運営をしているだけではありません。もちろん、コワーキングスペースの運営をしているだけでもありません。どのように関わる人の想いを発露させていくのか、やりたいことを具体化できるように支援するのか、関わる人たちの仕事や活動のステップをつくっていくのか。最初のお話にあったような「伴走者」としてなにができるのかを考え、そして、そのできる範囲や方法を広げてきたのが「合同会社PicnicWork」の活動のプロセスであったのではないかと思います。そうやってまちを編集してきた交久瀬さんは「メディア」という存在と、どう向き合っているのでしょうか。

ここからは今回のテーマである「メディア」についてお話しいただきました。

一般的にメディアとは、2つの物の間に取り入って事物のやり取りのなかだちを行う媒体のことを指し、新聞やテレビ、YouTubeやTikTokなどが挙げられます。しかし、それは狭い意味でのメディアなのではないか、もっと広い意味でのメディアがあるのではないか、と話す交久瀬さん。

では、交久瀬さんが考える広い意味でのメディアとはなんなのか。

新聞やテレビなどの媒体という狭い意味でのメディアだけではなく、直接人と出会いつながることができる会社やお店、公共施設などの場所であったり、部活・サークルなど、人が集まるきっかけになる非日常のイベントも含めて広義のメディアである、というのが彼女が捉えている広義のメディアイメージです。ゆえに「合同会社PicnicWork」の活動であるデザイン事業やイベント事業、コワーキングスペース事業などのローカルメディアは広い意味のメディアだと話してくれました。

地域の中のあらゆるものをつなぐ役割を果たしているものを「ローカルメディア」と定義している交久瀬さん。ローカルメディアとして一方的な発信だけではなく、どう双方向的な関わりを構築していくのか。そのための編集とはなんであるのか。そしてその前に、関わる人たちにどう寄り添っていくのか、関心を寄せていくのか。交久瀬さんは、編集者である前に、一人の人としての関わりをつくっています。

気が合うみんなでおもろいことをしよう!がスタート

「枚方が好きだから枚方で活動しているんですよね」

地方で活動するとそのように言われる機会も多いそう。ですが、枚方という地域にこだわっている訳ではないと言います(もちろん嫌い・苦手という訳ではありません)。多くの取り組みがそこに集まった気が合うメンバーでなにか面白いことをしてみたい、という思いからスタートしているのだと言います。だからこそ枚方というまちに重きを置いていない、たまたま枚方だった、それを大切にしているのだと。

また、自分の役割は、いろんなヒト・モノ・コト・カネの調整屋さんであるとも語ります。なるほど、その役割がうまく機能しないとプロジェクトが頓挫することも多いですよね。交久瀬さんは行政職員、地元のベンチャー企業、そして起業という道を歩んできたことから、いろいろな立場や背景、状況を認識・理解するスキルが身についたのだと思います。

そして特に、行政職員時代の公平性という観点には大きく苦労したと話します。なぜなら行政の手続き的には公募やプロポーザルという方法を取ることが多いため、気の合う仲間たちで進めていくことは困難ですし、また、地元の有力な団体やキーパーソンを無視してローカルの取り組みを進めることはほとんど不可能だったからです。

ですが、独立・起業したことで価値観や経営の感覚、スピード感や考え方が合う人たちと一緒に進めていけばいい、気が合わない人と今すぐにやる必要はない、との考え方に変わっていったそう。またモノに関してもそこに元々あるものやある場所を使う、楽しいところに人は集まる、という自由な考えに変わっていったそうです。

メモをとる受講生のみなさん

交久瀬流「まちを編集する10の視点」

まちを編集するために大事なスキルやマインドセットはなんであるのか。それを要素分解するとどういう項目になるのか。交久瀬さんに10個のポイントを挙げていただきました。

1、聴く力
2、掛け算
3、巻き込み力
4、調整力
5、0→12までやりきる力
6、俯瞰力
7、好奇心
8、自分で汗をかく
9、マメさ
10、バランス力

さらに特に心掛けていることとして、いくつかの視点について語っていただきました。それが「フラットにバランスよく見る」「あらゆることに興味を持って、理解を深める」「自分から動く提案力」です。

まず、「フラットにバランスよく見る」は属性に関わらずにいろいろな人とできるだけ平等に関わり、偏らないようにするということです。日々生きていると自然と心がけているものさえ忘れてしまうことがありますよね。交久瀬さんも日々心がけている「属性にかかわらずにいろいろな人と関わる」ことを忘れてしまい、関わる人が偏ってしまうこともあるそう。そんなときは、自分自身が偏っていることを自覚し、今後の会社の活動で関わる人が偏りがないようにバランスをとっていくことを意識しているとのこと。偏っているだけで終わらせないのが意思として伝わってきました。

2つ目の「あらゆることに興味を持って、理解を深めること」とは出会った人がどんな人か、何に困っていて、どんな人に出逢ったら面白そうかを想像し自分なりに理解し覚えておくということです。理解し覚えておくことで、その後につながっていくことも多いんだそう。これは先ほどの話でもありましたね。また多くの人と会うなかで特に意識しているのは、できるだけオンラインではなく顔を合わせてリアルで話すことだと話してくださいました。SNSが発達し、オンラインで人と会うことも会議をすることも簡単になってきた時代。しかしリアルで会うことで、温度感が伝わりあったりするので少し遠くても会いに行くことを大切にしているそうです。

3つ目の「自分から動く提案力」とは、相手のペースに合わせながらも、提案のタイミングは逃さずに自ら行動することや自分から連絡するということです。これまでは相手のことを考えてしまっていたために行動できないこともあったとのこと。ですが、最終判断は相手が決めることと思い切ることで、遠慮せず提案してみることが自分のためにも相手のためにもなるのではないかと思い、今は自分から動き、提案することを意識していると教えていただきました。

それぞれのきっかけとスタートライン

交久瀬さんからの話題提供が終わった後は、聞き手の藤本がいくつか問い返します。

藤本さん)ローカルに入り込み、いろいろな人と関わって多角的に行動している人、そして特にそういったことをしている女性は少ないように感じています。ですので非常に独自性があるし、面白い方だなと思っています。裏方や人の話を聞いたりするのがお好きな交久瀬さんが、なぜイベント企画やまちづくりに興味を持ったのか、気になります。

交久瀬さん)まちづくりに興味を持った初めのきっかけは、中学校で生徒会に入ったことでした。その時の生徒会の活動がすごく楽しかったんですよね。生徒会に入ったことで、枚方市の花火大会のボランティアに参加することになりました。そこで大学生や大人との出会いがあったんです。高校生に上がり、そのつながりから枚方市で活動しているまちづくりサークルに入ることになりました。実際にいろいろな年代の人と商店街のイベントを企画したのが刺激的で自分の世界が広がった瞬間でした。その経験から、イベント企画やまちづくりに興味を持ったという経緯になります。

藤本さん)なるほど。それで大学も公共系の学部に進まれたんですね。

交久瀬さん)そうなんです。

藤本さん)面白いですね。中学生の頃から今につながるきっかけがあったんですね。

交久瀬さんのまちに関わるキャリアは中学生のときからはじまっていたと思うと、面白いですね!

聞き手の藤本と交久瀬さん

今回のとよなか地域創生塾では、地域の中のあらゆるものをつなぐ役割を果たすローカルメディアを通していろんな人やものを掛け合わせることで、無限の可能性が生まれることを学ぶことができました。イベントの最後には、塾生が進めているプロジェクトの進捗共有も。2024年3月9日には、今回の会場である庄内コラボセンター「ショコラ」で最終発表があるので楽しみです。
次回は空間活用コースのDAY7。1/26に「空間をつくってみよう!歴史を残してみよう!」というテーマで、ナノメートルアーキテクチャー取締役の三谷裕樹さんに講師としてお越しいただきます。お楽しみに。


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