官能評価の際に配慮すること

官能評価は「人の五感」を計測機器のかわりに使用する。計測機器と比べて誤差が生じやすく、また人によって感じ方はそれぞれなため、評価設計に際してなるべく誤差が生じない工夫をする必要がある。
そのためにはどのような誤差が生じるかを知っておくことが重要である。
代表的なものをいくつか挙げる。

官能評価を設計する際には、あらかじめその分野の基準(ISOやJIS, ASTMなどを)を参照するとよい。たとえばISOには”官能評価””官能分析””官能検査”などに関する規格が30個以上は定められている。

・期待による誤差
サンプルや評価の目的に関する情報は結果に影響してしまう。例えば同じチョコレートの評価だとしても、カカオ豆のロットが異なっても品質に差がないことを確認したいのか、商品改訂で特性の差が明確になっていることを確認したいのか、など評価の目的を知っていると、そこを意識しながら試食してしまう。また提示するサンプルにA,B,C…などの記号を付与していると順番を想像してしまうかもしれない。このように情報が与えられてしまうと”期待”により誤差が生じる可能性があるため、なるべく情報を与えずに評価ができる配慮が必要である。

・刺激による誤差
提示しているサンプルの見た目や提示方法にわずかにでも違いがあると、そこに着目しすぎてしまう可能性がある。量、大きさ、形、提示するお皿や容器をそろえる糖、なるべくサンプルの本来の違い以外の差が生じないように配慮する。

・論理による誤差
頭で考えて回答してしまうことによっても誤差が生じる。たとえばスープを2つ提示して、どちらかが濃い黄色だった場合には薄い黄色のものよりも味が香ばしくて濃いと判断してしまうことがある。
見た目による影響が大きいと考えられる場合には外観が見えない状況で評価したり眼鏡や照明により色の違いがわからない状態で評価をすることもある。

・位置による誤差
3種類のサンプルを同時に並べた場合は、端の2つよりも真ん中の1つが異なるものだと判断されやすい。また端のサンプルよりも2番目に配置されたサンプルを実際よりも高く評価したり逆に低く評価したりする偏りが出やすくなる。パネリスト間でサンプルの配置をランダムにするなどの工夫が必要である。

・対比効果/収斂効果
少ししか差がないサンプルを比較した際に、感じた違いの程度を実際よりも誇張して評価してしまうことがある。逆に、直前に大きく特徴の異なるサンプルを評価していた場合に、実際よりも差を小さく評価してしまうことがある。このような効果を防ぐためにサンプルの提示順序をパネリスト間でランダムにする工夫が必要である。



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