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峠のラーメン屋(2020年のこと)

ある峠で、時間も遅くなり何かを食べなければ、しばらくは店もないだろうと思っていた頃合いに、1軒のラーメン屋が見えた。時間はおよそ20時過ぎである。あたりは深い闇だった。

どさんこラーメン(北海道系)だった。迷わず入店し食すことにした。メニューには数種類のラーメンが並んでいたが、イチオシのようだった味噌ラーメンを注文した。

まもなく出てきたそのラーメンは、野菜もたっぷりで味もほど良い濃さの味噌だった。麺もしっかりしていてスープに絡み、とても美味しかった。次回に、この峠を走るなら是非ともまた立ち寄ろうと思い、満足して店を後にした。


それから、幾月日が経ち仕事でその峠を走っていた。前回と違い同僚も乗っている。ふとラーメン屋があったことを思い出し、同僚にその時の話をした。そして、そのラーメン屋があったら寄ろうということになった。

走っていると、確かにそのラーメン屋はあった。時間はおよそ18時頃である。少しだけ陽は残っていて明るかった。

どことなく建物が違う。建っている場所も少し違うように思えた。しかし、マップ検索するとそのラーメン屋しかない。中に入り、ほとんど同じ配置であることで、間違いないようだと思った。さらにメニューもほとんど覚えていたものに近かった。

ただ、気になったのは、人が違うことだった。前回来た時は、夫婦で切り盛りしているように見えた。しかし、今回は店主と思われる老人とその奥様であろう老婆、それに弟子であろうか中年手前の男、さらに少し不釣り合いな夜に呑み屋でもしていそうな女性がいた。
お客の数に対しても多すぎるように思えた。それでも、目的の味噌ラーメンを二人で注文した。出てきたラーメンは、以前とは違い、野菜が少なかった。

気にせず食べ始めたのだが、すぐに顔を見合わせた。それは互いに伝わったようだ。黙々と食べて、すぐに店を出た。

全く美味しくないのである。2回目の自分にとっては、前回とあまりに違っていて言葉にならなかった。同僚にもこんなはずではなかった。と。言い訳するしかできなかった。

これは、いったいどういうことだろうか。

人もラーメンも別である。しかし、ロケーションは多少の違和感はあるが、まぁ間違いない。当時は、そんな風には考えなかったのだが、今ではこれはマンデラなのか、違う世界線の同じラーメン屋なのか、、、と、考えてしまう。

見ている世界に本当のことは、どれほどあるのだろうか、、、


追記
あれこれ思案するうちに、あることに気付いた。
1回目の来店で切り盛りしていた夫婦と、2回目の来店で居た老夫婦は、もしや同一人物ではないだろうかと。
1回目か2回目かどちらかがタイムリープなのではないかと、、、