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「心理カウンセリングの終結」 臨床心理士への随録 心理学

どんな状態になれば、心理カウンセリングは終結となるのだろう。

精神疾患を負っている人に対しては「症状が再発しない状態になること」だと思ってスーパーバイザーに尋ねたところ、

「症状の再発、それ自体は悪いことじゃない。もちろん再発しないに越したことはない。再発する可能性はどこまで行ってもゼロにはならない。だから、再発時に今までとは違う対処ができるようになること。それがカウンセリングのひとつのゴールかな。」

と、アドバイスを頂いた。

困難にぶつかった時、今までとは違う対処ができるようになれば、なんとかやってみるかという希望が出てくる。心理カウンセリングの場で、丁寧に一歩ずつ自分の力で課題を整理しクリアしていくことが、自信に繋がる。一縷の希望や自信を獲得してくれたら、終結でいいのかもしれない。

そういう手応えみたいなものをセラピストが感じていない状態でも、クライエントが突然来院しなくなって終結するケースもある。

セラピストは打ち切られた悲しみや喪失感を味わい、原因帰属を自分の力量不足に置くことで自己効力感が低下する。クリニックの先輩に相談したところ、

「本人が(カウンセリングを)止める時が終結。それでいい。」

と、アドバイスを頂いた。

例えば適切な自己主張ができないことに困難を感じている人、うつ病などによりパワーが低下している人が、その状態でカウンセリングを打ち切る決断ができるだろうか。改善したり高まったりしたからこそ、そうした行動が取れたのだと解釈する。全ケースに当てはまる訳ではないが、確かにひとつの考え方ではある。

色々な終結の仕方がある。最近になって、神田橋先生の言葉が身に沁みている。

「いつでも、あと五分で面接を終了できるように工夫しなさい」(「追補 精神科診断面接のコツ」神田橋條治著)

いつ終了しても後悔しないように、毎回毎秒、真剣に臨んでいきたい。