私たちが途立つわけ
パソコンのフォトフォルダを整頓していたら、絨毯のように白い雲とビロードみたいに広がる水色、淡い青、藍、紺、濃紺のグラデーションの写真が出てきた。夫が海外出張に行った際、飛行機の中から撮影した一枚らしい。
こんな景色が現実にあるんだね。私がそう呟くと、隣で読書をしていた夫はいたずらっぽく笑った。
「現実じゃなかったのかもね」
まさか。そんなわけないよ。
「そう? 自分の認識なんて軽く飛び越える事象の方が、多いと思うけど」
正論だ。正論すぎる。だから私は悔しくて、こんなことを投げてみた。
「じゃあ、この景色を見に行こう」
「飛行機に乗るの?」
「そう」
夫はようやく文庫本から目を離してくれた。
「空の境界線が見たい」
「それは手段の目的化ってやつだね」
「すぐに小難しい言葉を使いたがる」
「なんかかっこよくない?」
「さぁ」
次の連休に合わせて、飛行機のチケットを購入した。羽田発、目的地は、未来。
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