ファスト映画を合法的にビジネス化してみる
映画を10分ぐらいの短尺にまとめた映像コンテンツ「ファスト映画」の被害がニュースになっています。
最近は著作権法違反の疑いで、逮捕者まで出ております。
権利者にとっては由々しき自体ですし、野放しにしておくと、コンテンツ業界全体にとっても大きなマイナスです。
ただ、「ファスト映画」を何とか合法的にビジネス化できないか?
ちょっと考えてみました。
※あくまでも思考実験です。深い検証なしに、思いつくままに書きました……😆
市場
今までの被害額は950億円超にもなるそうです。
コンテンツ海外流通促進機構(CODA)の試算では、これまでの累計被害額は950億円超
(ねとらぼ)
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2106/21/news112.html
かなり大きな金額ですね😅
たった10分の動画でここまで被害が出るとは、「塵も積もれば山となる」的な感じなるのでしょうか。いや、コンテンツ海外流通促進機構(CODA)によると、「700万回近く再生されている動画も存在」とのことなので、一つあたりのコンテンツもかなりの「破壊力」がありそうです。
また、被害額950億円=市場性と単純に考えることはできませんが、それなりの規模感あるイメージです。
違法⇔合法の綱引き
「違法性が高い」「限りなくクロに近いグレー」といったサービスやコンテンツは、今までもありました。
初期のYouTubeやニコ動、クランチロールなどは違法動画ばかりでしたし。
その後、各サービスは権利者と交渉。テクノロジーの進歩とともに、合法的なサービスとして生まれ変わり、ビジネス的にも成功します。
音楽についても昔は、違法にUPされたmp3との戦いがありました。
P2Pなどでも展開され、権利者たちが限りあるリソースの中で駆逐するのは、至難の業でした。
しかし、Spotifyなどのサブスクサービスの登場により、海賊版は徐々に消えていきました。
ネットの素性の分からないmp3のファイル自体、粗悪で危険性もあります。音楽好きの人にとっても、実は利用したくないものだったのです。
「映画」の権利
著作権的にみると、「ファスト映画」とは何でしょうか?
一言でいうと、「映画の著作物」ですね。
「映画の著作物」には、映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を含むもの
(著作権法:第2条第3項)
短い尺で雑にまとめた映像も、立派な「映画の著作物」です。
権利者としては以下が挙げられます。
①モダンオーサー(映画の内側の権利者)
・映画製作者(製作委員会等)
②クラシカルオーサー(映画の外側の権利者)
・原作
・脚本
・音楽(作詞/作曲)
※②のクラシカルオーサーは、映像とは別の権利者になりますが、原作や脚本、音楽などは「映画の著作物」にはたいてい付随しています
※もちろん、原作はなし、脚本も作らない、音楽も使用しない映画といったものであれば、クラシカルオーサーの権利は発生しません
他には、著作隣接権(音楽原盤、実演家等)なども関わってきたりします。
実際のシュミレーション
原作がOK出さないと、そもそも難しいとか、ネタバレコンテンツが出てくると、より売上が見込める本編の方にダメージがある等々もあるかと思います。
けれども、あくまでも思考実験として、ここから実際に「合法的にビジネス化」できるかどうか考えてみます。
なお、YouTubeでの配信であれば、「自動公衆送信権」の扱いになりますね。
■前提■
「既存映画を勝手に編集して、動画としてアップロード」
これは100%NGですね。
権利者から訴えられます😖
①権利者からライセンスを受けて、ファスト映画を展開する
初期のクランチロールなども海賊版がはびこっていましたが、今は見る影もありません。
権利者から正規にライセンスを受け、海賊版対策の仕組みもできているからです。
ですので、ファスト映画も権利者から、しかるべき事業者にライセンスをするのはどうでしょうか?
ライセンスのやり方は2つあります。
(A)広告収入に応じたライセンス料
(B)フラット(定額)ライセンス料
(A)はライセンスしても、幾ら広告が見られるのか、収入が得られるのか分かりません。
映画の本編動画の「邪魔」になるだけで、お互い足を引っ張ってしまう可能性もあります。
という訳で、権利者側からライセンスする可能性は低いと思います。
もっとも、ミニマムギャランティの設定などすれば良いかもしれませんが、広告収入に応じるのは「実績」が見えてからの方が、最初は権利者側としても安心です。
ですので、(B)のフラットが、現実的かもしれません。
権利処理費について……
音楽を使わないとしたら、
原作:10%
脚本:3.5%
……程度でしょうか。
(脚本の権利料はある程度決まってますが、原作は結構バラバラです)
また権利処理費については、権利者側が処理した方がスムーズでしょう。
その分、ライセンス料が上乗せになりますが。
事業面としては、
ファスト映画の事業者側が、ライセンス料を支払った分がだけの収益が得られるかどうかが勝負になりますね。
②権利者自ら、ファスト映画を展開する
事業を進めるのも、止めるのもまずは権利者の判断です。
第三者のファスト映画事業者からすると、自由がきかず、不確定要素が強いので、なかなか事業プランが立てにくいと思います。
ですので、権利者自らがファスト映画の事業者となる方が、幾らかは可能性がありそうです。
東宝の『ゴジラ』のように、権利者自身が「原作元」であれば、原作側の了解を得ることも不要ですし。
また、本編映像との相互プロモのようなことも容易そうです。
懸念点としては、関係会社・部署との調整ですかね。
動画配信の黎明期には、配信があるからDVDやBDが売れないんだ! とするメーカーもありました。
ファスト映画のようなネタバレのコンテンツを出すのは、彼らが嫌がるかもしれません。
ただ、ここの調整がうまくいけば、少し可能性が出てくると思います。
③元の映画を、「引用」の範囲に留める感想コンテンツにする
ファスト映画の定義から外れてしまいますね、これは。
ただし、「引用」が適切であれば、誰からも文句は言われないので、一番無難かもしれません。
もちろん、そうしたコンテンツが面白いかどうかは別ですが。
まとめ
ざっくりと「思考実験」として、書きながら考えてみました。
全然まとまっていなくて、すみません……🙏
現実的に考えると、ライセンスを受けるファスト映画の事業者としては、権利者側からかなり高額なライセンスフィーをふっかけられそうなので、ちょっと難しいかもしれませんね。
リスク分も上乗せすると思いますし。
ということで、権利者側が「試し」にやってみるのが実現性が一番高そうではあります。
どこかの会社がやってくれませんかね?
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