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ごめんなさい

小児科。患者さんは子どもだけど、話はお母さんから聞く、ということが少なくありません。うまく話せない子どもたちの場合はなおさらです。

発達障害の外来には、気持ちを器用に伝えることができない子どもたちがたくさんやってきます。みんな、受診の理由がよくわからずに、不安な気持ちでいっぱいです。何か悪い病気なのかもしれない、痛い検査があるかもしれない、入院しないといけないかもしれない。

たっぷり時間が取れない時は、主にお母さんから話を聞くことになりますが、心配しているお母さんは、当然心配事から話されます。お母さんが少し険しい表情で、ぼくが知られたくない学校や家での失敗談を、今日会ったばかりの白衣のおじさんに話す。もうそれだけで、居心地が悪くて帰りたい。そう思ってるんじゃないかな。

ごめんなさい。君の気持ちを一番に考えないといけないけど、お母さんの気持ちも知りたい。時間と場所が足りなくて、みんなの話をゆっくり聴くことができません。お母さんの顔を険しくしたのも、きみの嫌な事を話させたのもみんなその白衣のオジンが悪いんです。お母さんは悪くないよ。

二十年もやってるのに、僕は何も変われていない。本当にごめんなさい。病院に来ることで、何か一つでもきみやきみのお母さんの足しになることがあればいいんだけど。まだ答えがわかりません。


#発達障害 #小児科

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