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鶏ハムテレパシー

「ねえ嫁ちゃんさあ、週末にコストコ行くよね」

「そうだね、楽しみだね!夫くん」

「ぼく、めっちゃ食べたいのあるんだけど…」

「まって!分かった!鶏ハムでしょ?」

「えっ!?なんで分かったの??」

「ふふん。嫁の力をなめちゃーいかんよ」

「まーた受信しちゃったのか」

「そうそう。ビビッと来たね」

ぼくたち夫婦は会話をしているとき、ふいに
ビビッと相手の思考が読み取れる瞬間がある。

この現象を電波を受信したとお互い呼んでる。
テレパシーみたいでうれしい瞬間のひとつだ。

これは付き合っているときはあまりなかったが
結婚し一緒に過ごす時間と比例するかのように
電波受信精度は高くなってきたような気がする。

もしかして、これを極めると夫婦の以心伝心
ランクアップするのかもしれない。おもしろい。

・・・

鶏ハムの話に戻るけど、これは別に
コストコで売っている商品ではない。

コストコで売っているお手頃で美味しい
鶏肉で嫁ちゃんが作るのだ。鶏ハムを。

「えっ!?ハムって自宅で作れるの!?」

数年前、嫁ちゃんが鶏ハムを作って進ぜようと
発言したときは心底驚いたものだ。
ハムはお歳暮の業者しか作れないだろうって…。

「まあまあ、私にまかせておきなさいよ」

一切の気負いなく語る嫁ちゃんに後光が見えた。
もしかしてこの女、徳を積んだ高僧かもしれぬ。

その言葉に偽りなく、出来上がった鶏ハムは
膝が砕けるほど美味しすぎた。
(タイトル画像のブツがそれです)

しっとりと、やわらかく、なめらかで、上品
舌にぴたりと馴染み、鼻に抜ける香りは高く
歯ざわり、弾力、咀嚼の幸福感、そして余韻。

全てが信じられないほど美味しかった。
なんぞこれ。こんなの家で作れるのか!
無意識にぼくは嫁ちゃんを拝んでいた。
やはりこの女、ただの人間ではないぞ。

「美味いよ!美味すぎるよ!鶏ハム!」

「夫くん、喜ぶのは少し早いんじゃない?」

「えっ、それってどういう・・・」

おもむろに冷蔵庫からビンを取り出す嫁ちゃん。
ビンの中に入っていたのは・・・

「ニラダレだよ。これをかけて完成」

なんと嫁ちゃんは自作のタレまで作っていた。
そのタレと鶏ハムの相性が良すぎること…!

この日嫁ちゃんにまたひとつ
必殺メニューが加わったのだ。

必殺メニューとは?
なんかめっちゃいい感じの料理の総称である

・・・

というわけで、この日以来ぼくは事あるごとに
鶏ハムをリクエストするようになったのである。

ありがとう鶏ハム。ありがとう嫁ちゃん。
どっちも愛してる。


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