見出し画像

競り落ちる雪 (会員制の粉雪)#毎週ショートショートnote

地球に季節というものがなくなり、もう何百年と経つらしい。僕が生まれた時から、この世界には夏しか存在しない。

『本日の商品は《幻の粉雪》!』

会員制のオークション会場。会員になる方法は知らない。ただ、僕達とは違う世界の奴らしかなれない、ということだけは分かる。

「爺さんは雪、見たことある?」

一緒に来た爺さんは隣の小屋に住む変な人だ。
でも、いつも魚を分けてくれるし「お前、掃除なんてしたことないだろ」と、一緒に会場掃除の仕事をやりに来てくれた。

「さすがに爺さんでも見たことないよね」
「昔々、生き残るために一部の人類は氷漬けになったんだ。冷凍人間だな」
「え?」

――カン!

ハンマー音が響き『落札です!』と司会の男が叫ぶ。会場は「おお」と感嘆の声に包まれた。

「あれは偽モンだ。普通は暑さで溶けちまう」

舞台から遠いここからでも「粉雪」のきらきらとした輝きが分かる。
絵本に出てくる宝石みたいだ。

「馬鹿げた道楽だな。いつの時代も結局金、か」

(410字)


たらはかにさんの企画に参加いたします。
お題「会員制の粉雪」

私はレミオロメンと粉チーズが真っ先に浮かびました。
今回は未来的なお話も意外とありましたね。
お題の難易度、どんどん上がってる…

この記事が参加している募集

SF小説が好き

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?