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「両家の顔合わせ」は部活の思い出ざんまい

ちょうど3ヶ月前、梅雨入りしてすぐのよく晴れた日曜日のお話です。


午後には、間宮くん(私は娘の旦那さまを、noteではそう呼んでいます)のご両親が我が家にいらっしゃるので、私は朝からなぜか、キッチンの換気扇を大掃除していた。
キッチンには来られない予定なんだけど、なんとなく、家の空気をきれいにしたくて。



5月に長女は籍を入れ、晴れて間宮くんと夫婦になった。家族みんなの予定が合わずに先延ばししていた「両家の顔合わせ」という儀式が、入籍後にやっと行われることになった。

結納をしない人が増えた現在、どこかの料亭でご馳走を食べながら両家の顔合わせを…というのが最近では多いらしいが、我が家は難病の二女もいるので外食は難しい。
しかも会食は、いまのご時世、やっぱり気がひける。

二女を預けるという選択肢もなくはないが、『彼のご両親にも二女に会っていただきたい』という私たちの想いもあり、我が家でお茶でも一緒に…という運びになった。



もうすぐ2時というとき、パジャマ代わりのスウェット姿の息子が、ボサボサ頭でうろつき、私を見て

「母さん、よそ行きの格好しとるけど、靴下に穴が空いとるで。」

と教えてくれた。私は老眼のせいにしながら、慌てて靴下をチェンジする。
危ないところだった。
バイトが休みで、彼も家にいる。

「あんたも、挨拶だけでもしたほうがいいから、一応着替えておきなさい。」

という私の声が聞こえたのかどうか、さっさと息子は2階に上がって行った。



午後2時過ぎ、娘夫婦と一緒に間宮くんご両親が我が家に到着。
玄関で挨拶をされる間宮くん父は、スーツ姿でやや硬くなっておられるご様子。
対照的に、間宮くん母は穏やかな笑みを浮かべてゆとりの雰囲気。
我が家の夫は、黙って私の少し後ろにいる。
仕方なく私が「リビングへどうぞどうぞ。」と誘導した。

こういうとき、母親の方が強い。


6人が着席して、「挨拶」が始まる。
まずは間宮くんがきっちりと本日の趣旨を話して、それぞれの挨拶がひとまわりすると、いよいよケーキと珈琲で、くつろぎの歓談タイムがスタートした。


今回はイチゴのヘタはありません(笑)食べても良さそうな緑の葉はちらほら…



ふと見ると、リビングのベッドに寝転んでいる二女のゆうはスヤスヤ眠っている。彼女なりの気遣いなのか、眠るゆうがなんだか健気に思えた。

ケーキと珈琲だけでのおしゃべりは、想像以上に盛り上がらない。当然だが、お酒の席の勢いがない。
とりあえず天気の話から入り、住んでいる場所の話やそれぞれの出身地の話、年齢の話で場を繋ぐが、そこからは話が続かない。

我が家もだが、間宮くんのご両親も、子どもたちの暮らしや結婚式などに一切口を出す気持ちがない。すべて、本人たちの思うようにすればいいと思っている。相談されたら全力で助ければいい。
だから、彼らについての込み入った話題には全くならなかった。


結局、間宮くん母と私しか喋らなくなり、長女夫婦はたまに相槌を打ち、父親2人はケーキを早々と平らげてうなずきおじさんになっていた。

やっぱりこういう時、母は強い。

話題は当たり障りのない共通点探しに傾いていく。
そこで助かるのが学生時代の「部活」だ。

「学生時代の部活、たしか間宮くんは陸上部だよね。夫も私も、高校や大学では陸上部で。」

と私が言うと、間宮くん母が、

「私も中学生のとき陸上部だったんです。種目は…」

と、話が膨らんだ。
間宮くん母と私は、年齢はひとつ違うが出身が同じ市内だとわかると、共通の知り合いをお互いが必死で探し始めた。私の高校の先輩が、間宮くん母の友人で、その話題で2人だけが盛り上がった。
最終的には、「〇〇中学の応援のかけ声ってこうだよねー」と言いながら


ぶい、あい、しー、てぃー、おー、あーる、わい!(←VICTORY)
(手拍子パンパン)
ゴーゴーレツゴー、レツゴー〇〇中、ファイトー、ファイトー、〇〇中
(パンパン)

と、手拍子しながら2人がはしゃぐ。
残りの聞き役たちはもう、苦笑いすらしなくなった。


やばいぞ!何か、話をみんなで共有しなくては!

そこで、私は思い切って、間宮くん父に話しかけた。

「間宮くん父は、学生時代、部活は何をされていたんですか?」

「あ、私はテニスを。」

来たー!息子はテニス部。一応夫は小学生の頃は卓球部(テーブルテニス)だったらしい。これで話がしばらく繋げる!


そんな感じで、2時間くらいをほとんど部活ネタで楽しく話した後、めでたくお開きとなった。

ゆうはずっと寝ていた。結局、寝顔しか見せなかった。途中で痰吸引することも、おむつを替えることもなく、ずっと寝ていた。なんだかやっぱり彼女が気を遣っているように思えて、ちょっと泣きそうになった。
いつものままのゆうを見てもらってよかったのに。


最後に記念写真を、ということになり、6人が並んでセルフタイマーで写真撮影をした。
連続で6枚、カシャカシャと写真を撮り、玄関までお送りする。

息子を呼ぶと、2階からドカドカと、スウェットのまま降りてきた。
着替えてない。

「おぉ、息子!おまえ、頭もボサボサやな!」

間宮くんもいつの間にか、息子を呼び捨てで呼んでいる。こうやって家族になっていくんだな、と思った。
息子の登場が笑いになり、笑顔でお別れの挨拶ができた。




夜、知らない名前からLINEが来た。
よく見たら娘。

「間宮長女」

入籍した日ではなくて顔合わせの日から、「LINEの名前の苗字を、旧姓から間宮くんの苗字に変える」と、娘は決めていたそうだ。
彼女なりのけじめだったんだろう。

娘はLINEで、今日のお礼と写真を送ってくれていた。
6枚中の1枚の写真に目が留まった。

間宮くんご両親と間宮くんの3人が、揃って目をつぶっている。

「まぁ、かわいい。間宮さん、ほんとに良い方たちだね。」と、写真を見て夫と笑った。
このご両親となら、一緒に若い2人の未来を見守って行けそうだ、と心から思った。









最後まで読んでいただき、ありがとうございました。娘たちには、記事にすることを了承済みです。(笑)

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