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水の中

私は水辺が大好きなのですが、水のなかに入るのも大好きです。実家に住んでいた頃、よく市の体育館にあるプールに通っていました。

小学生の頃は、プールが苦手でした。
気温が上がらず肌寒いのに、体育の時間で決められているから強制的にプールに入らされるのがイヤでイヤでたまりませんでした。
唇は紫色になって、ブルブル震えてプールに入っていました。

水のなかに入るのが楽しくなったのは、大人になってからでした。

市のプールは片道50メートルで、3つに区分けされていました。
一番右の2レーンがお年寄り用のウォーキングコース、真ん中の4レーンが自由に泳ぎの練習ができる開放コース、左の2レーンは上級者さん達が魚のように泳ぎまくるプロコースになっていました。

私は真ん中のコースで、ビート板を使ってバタ足から始めました。
数週間、バタ足をして、その後平泳ぎを練習しました。
初めのうちは、手で水を掻き、足で水を蹴っても、全然進まず、底の方に沈んでいくような感じでした。でも練習しているうちに、少しずつ上達していきました。
平泳ぎで50メートル泳げるようになってから、次はクロールの練習に移りました。
速さよりも、姿勢を綺麗に保つことを心がけました。隣のレーンで鮪みたいに泳ぐ上級者さんたちのフォームを見て、研究しました。

プールの真ん中辺りは一段低く、つまり深くなっていて、底に足を着くと水面が鼻よりも上に来ました。
その状態で長くいると、当然のことだけど、息ができなくて溺れて死んじゃうので、平泳ぎのときもクロールのときも、必死で50メートルを泳ぎ切りました。

3キロくらい泳げたらカッコいいな、と思っていましたが、私は行き・平泳ぎ、帰り・クロールで都合100メートルが精一杯でした。基礎的な体力も、技巧も、センスも足りませんでした。
でも水に入れるのが嬉しくて、水のなかは心地良くて、一生懸命泳いで、たまに漂って、水を楽しんでいました。

温水プールだったので、秋冬でも泳ぎに行きました。
家を出るまえに布団を干して、プールから帰ってくると取りこんで、ほんのりあったかい布団で昼寝するのが、とても気持ち良かったです。

あるとき、休憩中に、監視員のお兄さんが、「50泳げるでしょ?監視員のバイトしませんか?」と声をかけてくれました。
50は泳げるけど、なんとなく、お兄さんは私の速そうな水着を見て声をかけてくれたんじゃないかな、という気がしました。
実際、私の水着は某スポーツメーカーさんの、すっごく速そうに見えるカッコいいやつでした。
見た目だけで、監視員やるような技量はなかったので、「いえいえ、私、まだまだですから」と丁重にお断りしました。

好きな水泳選手は、マット・ビオンディ、イアン・ソープです。(時代を感じるなぁ…)
男子競泳は大好きで、いつ観ても、速くてカッコよくて、圧倒されました。
ナニこのスピード、ナニこの美しいターン。
この人たち、ヒトじゃないでしょ、イルカとかの生まれ変わりでしょ、と思っていました。
また、競泳選手さんは肩幅とか胸板とか、しっかりしていたので、「体格ナイス!ありがとう!!」と目の保養をしていました。
腰のあたりのラインとか、たまんない。最高ですよね。
ん?違う話になってきちゃったな。

水のなかは基本的に無音で、私はそれが好きです。

世界は静かで、なんの喧騒も聞こえてこない。
聞かなくていい。
聞かされることもない。

平和で、穏やかで、透明で。
自分の水音と、誰かの水音が、溶けていく。
また静かになる。

水のなかは、透き通った、まぁるい世界。
誰もが、魚のように存在する、自由な世界。
そして、音もなく、音が響きあう、美しい世界。


では、今日はこの辺で。
読んでくださって、ありがとうございました。
また明日。
おやすみなさい。

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