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おつかれいアプローチ

「あー、髪の毛、切るべきなのかなあ」と悩んでいた。

わたしは長いことロングヘアだ。アラフォーになってからはときどき「年齢的にそろそろ髪の毛切るんでしょプレッシャー」を受けることがある。

「40代のロングヘアは痛々しい」
「40代になると髪が汚らしくなる」
「40代はショートでしょ!」

こういう主張に出会うと、申し訳なくなる。アラフォーなのにロングヘアですみません。くせ毛の多毛なので、ショートになんてできっこないんです、とどこかに向かって詫びたくなる。

実際、10年ほど前にあごまでのボブにしたときは大変だった。毎朝、起きると髪がぼわっと膨らんでいた。かといって、その長さではアップヘアにするわけにもいかない。仕方なく、時間をかけてヘアセットしていた。

また、わたしの趣味の一つはヘアアレンジだ。10年以上かけてロングヘア用のヘアアクセサリーも集めた。注ぎこんだお金の総額はけっこうなものになるはず。もうちょっと、これらヘアアクセサリーを楽しみたい。

そういう貧乏性ならではの理由もあって、髪を切る決断ができない。

自分の好きなヘアスタイルでいいじゃない、というのがわたしの基本姿勢だけれど、やっぱり人にそしられるおそれを感じるとひるむものだ。ただ、見苦しくないよう、できるだけ2週間に一度、トリートメントに通うようにはしている。

もう一つ、体型維持に関する意見も見聞きする。

筋トレとエクササイズをほぼ毎日していると言うと、ときにこんな言葉をかけられる。

「ある年齢以上になると、痩せてる人は老けて見えるよ」

わたしは体重を減らそうとして運動しているわけではない。筋肉をつけたいだけなので食事制限はしていない。けれど、上の発言をする人に「痩せたいんじゃないんだってば」と言ってもだいたい聞き入れてもらえないのはなぜだろう。

年を重ねることに対して、いろいろな人が一家言を持っているようだ。誰にでも「理想の加齢スタイル」があるに違いない。

そういうことを考えつつ呟いたら、夫がのんびりした声で返事をした。

私「加齢も難しいね。年くらい、好きにとらせてほしいよね」
夫「おう。おつかれい」

……。わたしの創作ではない。ほんとうに夫はこう言った。

惑うアラフォーの心を救うのは、この寒さかもしれない、と思う夕方。昼間は美容院に行ってきたのだけれど、悩んだ末に髪は3センチしか切ってもらわなかった。変わらぬロングヘアだ。あと半年はロングのままでいようかな。

わたしに、あなたに、おつかれい。加齢へのアプローチもまた、人それぞれでいいのではないだろうか。

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