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【読書日記8】『転落』/カミュ(前山悠◉訳)

比較的薄い本なので、早く読めるだろうと思ったら、ことのほか時間がかかってしまった。そりゃそうですね。カミュだし。学生の頃、他の方の翻訳で読んだが、その時も結構時間がかかった記憶がある。ちなみに、その時は『転落』の他に『追放と王国』という短編集が併録されていたが、今回の翻訳では、『転落』のみの収録だった。

順風満帆な弁護士である主人公クラマンスが、いかにして転落していったのか。バーで出会った男に自分の人生を語るというお話。
単純に「おもしろ〜い!」と言えるほど理解はできていないが、一つ一つ、この解釈であってるかな? ここは何の比喩? などと考えつつ読んだので頭の体操にはなったに違いない。
とにかく1回読んだだけでは、なんのこっちゃ、と思う部分が多いのだけど、今回翻訳をされた前山悠先生の解説がとてもわかりやすかった。内容について順を追って要約してくれているだけではなく、カミュとサルトルの論争という、時代の背景をもとに本書を紐解く。その解説を読んでからもう1度本文に戻ると、あ、これってサルトルのこと?などとまた想像できたりもする。
1956年に刊行された『転落』、今回の翻訳を読んでみると、現代社会にも通じるところがあり、誰もが誰かを裁いていいような風潮の現代社会への痛烈な皮肉としても読める。預言者か。いや、人は変わってないということなのか。

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ところで、本書は光文社古典新訳文庫から出されているのだけど、この文庫シリーズのキャッチフレーズがとても好き。

いま、息をしている言葉で、もういちど古典を

「気取らず、自由に、心の赴くままに、気軽に手に取って楽しめる古典作品を新訳という光のもとに読者に届けていくこと。それがこの文庫の使命だとわたしたちは考えています。」と公式サイトに書いてあった。とても響くメッセージ。

https://www.kotensinyaku.jp/

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