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6_色に価値を与えたブランドの気概~オランジュ・エルメス

『オランジュ・エルメス( Orange Hermes)』という鮮やかで少し赤みが強いオレンジ色は、あの世界的ブランド『Hermes』のCIカラーであるオレンジ色です。

『エルメス(Hermes)』は馬具工房がスタートだったのですが、自動車の台頭による馬車の需要減少を見越し、皮革製品を事業の軸に据えて発展したという経緯を持っています。 御存知、「バーキン」や「ケリー」の愛称を持つ鞄は世界中の女性の憧れの的です。

フランスの伝統色としても認められている世界的ブランドのオレンジ色はどんなコンセプトを持つのでしょうか?
強いオレンジ色と同系色の焦茶色との濃淡はモダンで洒脱ですが、実は最初はオレンジ色ではな くベージュ色を使っていたそうです。

しかし、第二次世界大戦時中の物資不足によりベージュの包装紙の調達が困難になり、仕方なく残っていたオレンジ色の紙を使うことになりました。

ところが、それがかなりインパクトが強く評判がよかったため、戦後に正式に採用されたのです。
CIカラーには企業理念や創業理念がたくさん込められているのが普通ですが、エルメスのオレンジ色は「代替の為に適当に決めたオレンジ色」が 出発点です。

それが今やブランドを象徴する色として風格さえ感じさせるオレンジ色に成長しています。 つまり、企業の製品へのこだわりや美意識の累積が「色に唯一無二の価値を与えた」のです。

ちなみに「ブランド」は元々「烙印」の意味があり、放牧している多くの家畜の中で「うちの家畜ですよ」と付けた「マーク」を指します。
色の戦略でブランド力をアップをさせたい・・・という気持ちはよくわかります。
しかし「色がブランドを育てるのではない」と思います。エルメスは自ら色を育て、自らブランドと共に色の価値を高めたのではないでしょうか。

ずっと残っている企業は、自らの既存価値を高めることに対して貪欲で革新的であり、刹那的な結果よりも、強いこだわりや高い美意識を培うことに力を注ぎます。
色を決めるとき、安易な色のノウハウやアドバイスに依存することは危険です。
良くも悪くも色には瞬発力があり、その場その場のインパクトを得ることもありますが、色という視点で考えるのであれば、気分や好みではなく色を選ぶ目や色を育てる力を持つことが、企業価値の継続には大切なことではないかと思います。

photo_tomomi kohara
at_color planning studio VISION,kobe

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