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『背高泡立草』古川真人

『背高泡立草』古川真人
第162回(2019年)芥川賞受賞

とても良かった。「夏」という響きに求めるノスタルジーがあった。

母親たちのとめどないお喋り。祖母の家で囲む昼食、うたた寝。

「わかるわかる」ってなる現代の初夏を軸に、かつて島で暮らした・訪れた無名の人々の記憶が挿入される。それぞれのストーリーがガッツリ絡むわけではなく、だから何が起きたわけでない。だからこそただ流れるだけの時というものを意識する。
刈られはまた繁茂する草花は、流れる時の象徴か。

絶対に不変ということはありえない、それを知っているからこそこれが永遠なのではないかと錯覚する一瞬。

身近な日常の中に「永遠」のかおりをしのばせるのがうまいなと感じた。

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