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『母親になって後悔している』オルナ・ドーナト

『母親になって後悔している』オルナ・ドーナト
https://honto.jp/netstore/pd-book_31456866.html

「母親の負担する役割が重すぎる」
「育児のタスクが女性に偏っていてフェアじゃない」
という話はもう散々されていてもはや目新しくはなく、これもそういう話かと思っていたが、育児の性役割に関する話がこの本のメインではない。(もちろんそれも前提にはなっているけれど)

女性が抱くことを許されない感情がある、という話だ。

実際に存在しているのに存在しないことにされている、表明する人がいれば「異常」か「逸脱」か「機能不全」だと扱われる。社会が絶対的なタブーとしている。それが、タイトルの「母親になって後悔している」という感情だ。

実際、この本を読んでる、と表明すること自体がリスキーに感じる。「私は後悔してるわけじゃないけど」と付け加えたくなる。強烈なタイトルだけに誤解を招きやすいと思う。それはこの本の扱っているものが「今世界でありえないこととされてる」からだ。透明化されている、だけど確かに存在する、それをこの本はとらえていてる。


以前夫とこれからの子育てについてどうするか話し合っていたとき、「あなたは家庭に向いてないよね」といわれてすごくすごく腹が立った。そのときはその不快感をうまく言語化できなかったけど、この本を読んで少しクリアになった。

一日中家庭にいるのは嫌だ、私も早く「外」に出たいという話から、ずっと家庭にいることを厭わずむしろ楽しんでいる女性もいる、という話になり、その点私は家事・育児を「楽しんで」やってるわけではないという理由で「向いてない」といわれた。ここ2~3年ほぼ一日中、家事・育児に専従しているにも関わらず。家事も育児も、百点満点でこそなくても特に「できていない」ところが外形的にあるわけでもないのに、それらに専従していることを「喜んで」いないというだけで「向いていない」と断定されたことに違和感があったのだと理解した。「女性は家事・育児は楽しんでやるものだ」という前提認識が透けて見えたから、嫌な気持ちになったのだ。そんなわけないのに。

家事・育児を楽しめない男性と同じくらい、家事・育児を楽しめない女性もごく自然に存在するはずなのに、「楽しんでいない」というそれだけでまるで落第者のように扱われたことに納得がいかなかったんだ。

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