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なるほど。「全部運命だったんかい」

最近はフェミニズムについての本を読み漁っている。

フェミニスト笛美さんは去年話題になったあの「#検察庁法改正に抗議します」のハッシュタグを生み出した人。

あれが結果的に多くの人の気持ちを動かして、マスコミも動かして、黒川検事の賭け麻雀が暴かれて、法案が廃案になったっていうムーブメントを起こしたんだった。

この流れで、もしかして国民の声って結構永田町のおじさんたちに届くんじゃないかって感覚も生まれたりして、その後の人々のアウトプットに大きな影響を与えた気がする。私も含めて。

あのハッシュタグの笛美さんは広告代理店に勤める30代の女性で、この本にある彼女が社会人として感じてきた男性社会に対する違和感や嫌悪感が痛いほどわかって、読んでる間ずっと私はそうだそうだほんとそう!と赤べこ状態。頭がもぎ取れるほどに頷きまくった。

いちばん共感したのは、フェミニズムや男性社会の構図が見えていろんな不条理に気づき始めたら、自分がいる環境は男女平等だと思っていた若い頃の自分に愕然としたということ。

私も特にカナダに数年住んだあとに帰国して日本の会社に再就職した時はいろんなことに気づいてしまって違和感を感じてた。特に飲み会案件はびっくりがいっぱい。

・職場の飲み会への参加は子供がいない限りほぼ強制。
・最初は若い女性職員が男性上司の近くに座りお酌してホステス係。そのうち男性職員もお酌にまわり接待。
・男性は下ネタ連発。笑ってのってくれる女性はノリが良くてオトナ、笑わないで本気で引くのは冗談が通じないノリの悪いオンナ。
・二次会は酒が深くなりさらに下ネタがエスカレート。あまりの下品な話題にひいていても、むしろそれを面白がるように笑われ男たちは止めようともしないし、守ってくれない。
・上司が上司なら部下も部下、という構図での下ネタ、セクハラのオンパレード。

キモ。
人間関係の距離感を、飲み会で、さらに下ネタも混ぜたコミュニケーションで密にしようとする方法、いわゆる飲みニケーションという概念は日本人のコミュニケーション能力の低さの産物かなと心の中で悪態。

他にも、
・なんで事務員さんはほとんど女性なのか
・子供が熱出したと言って早退したり休んで謝ってるのは女性ばかりなのか(休むなら前日に言ってもらえるとありがたいよねとか言ってる男もいたりする!アホか。)
・時短でバタバタと出勤してギュッと仕事して退勤する女性、退勤時間が過ぎてもだらだらとおしゃべりして残っている男性

独身子なしの私には関係ないことばかりだけど、なんで?ばかりが積み重なっていく。

この本では、笛美さんにとってのそういう違和感が語られて、共感することばかりで気持ちがいいくらい。

そして少しずつこういう違和感を感じる人が多くなれば、変わらないと思ってた大きなものも変わるんじゃないかとおもわせてくれる。

私が実生活で同僚にこういう違和感を語っても、あーそうですかねー?考えすぎじゃない?日本はもう男女平等でしょう?特にこの業界は給料とか男女同じだしー、という反応がほとんどだから。

そして、飲み会でちょっと太もも触られるくらいなんとも思わないですよとも言ってたりする。

私は嫌だ。

自分も自分の仲間や、今後一緒に働くであろう若い後輩の女性たちがよく知らんおじさんたちにそういうことされるのも我慢させられるのも嫌。

男性社会は男性だけが悪いわけではない。
何も言わないで黙っている、見過ごしている、場にそぐわない嫌な下ネタにも愛想笑いしてしまう私たちもこの社会を作ってる一員。

どんな人間関係でもそれがより集まったコミュニティでも、自分の思いを表出しないことには、何も変わらない。

それを女性が表現することを許されなかった時代があって、そのあと、もうこんな扱いじゃ我慢できん、これからの若い人もかわいそうだと立ち上がってくれた女性たちがいて、女性も少し自由になった今がある。
なるほど。全部運命だったんかい。

不快です、やめてください、なんて言う勇気はないけど。嫌な言動があれば無視したり笑わないという意思表示もできる。

楽しければ笑えばいいし、嫌なら笑わない。

そんなこんなでいろんなフェミ本をインスタで投稿したら、そのうちの1つにこの笛美さんがいいねしてくれた。
フェミニストのハッシュタグで反応してくれたっぽい。

そうそう、それでいいのって言ってもらった気がして心強かった。

最後に。通勤電車でこの本を読んでいたら、前に座っていたバリキャリ風の女性がこの裏表紙の帯にじっと見入っていた、気がした。

気のせいかもしれない。

でも。自分だけ大きな声をあげて、誰かを、世間を、変えようとしなくても、自分が自分の価値観を大事にするだけで、誰かが楽になるのかもしれない。

少しずつ静かにこっそりと。うふふ。

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