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『心象スケッチ 春と修羅 序』空耳図書館コレクティブ制作メモ02/23

 先日無事に本編朗読が終わり、これから編集作業に入ります。事前に詩をメンバー間で読み比べてみましたが、「声」のテクスチュアや読む速度で作品の印象が驚くほど変わり、あらためて「詩」と「音楽」の関係性にも興味が湧きました。身体の動きがつくとダンスにも近づきます。今回採用となったのはコロナ時代の「今」も記録した映像です。賢治にも見てもらいたい(笑)。
 映像は基本的に昨夏の東京アートにエールを!『空耳散歩』と同様に映像ロジックではなく、「目できく、耳でみる」サウンドスケープのデザインで編集します。この作業は自分にとっては作曲や録音と同じ感覚なので無理がありません。試しに「映像」として「視覚のみ」で編集したら上手くいきませんでした。これは自分が音楽家であることをあらためて自覚する体験でした。
 そもそも「サウンド/聴覚」と「スケイプ/視覚」が組み合わさった「サウンドスケープ」という共感覚的な思考から世界を捉え直すことは、特に聴覚に偏りがちな音楽の世界にこそ視覚への扉をひらくレッスンにもなると感じでいます。聾者の皆さんから「MVから音楽に興味を持った」というお話もよく伺います。私もそうでしたが幼い頃から聴覚を「訓練」しすぎると、実は世界や人間の捉え方が歪になってしまうのではないかと、サウンドスケープ研究を始めてから気づきました。これは「きく」を問う哲学とも繋がります。
 ちなみに撮影は前回同様に古いiPhone1台です。オープンリールやカセットテープ、そもそもフィルム時代の映画や写真の現場にいたので、視覚や聴覚は解像度が高すぎず、身体感覚から乖離しない道具を模索しています。最近の機材は高性能で便利すぎるというか。。少しの不便さはむしろ創意工夫の喜びにつながります。これはマニアックな楽器の演奏と同じ感覚かもしれませんが。。
 今回はコレクティブのドキュメンタリーとして、昨年12月から始まった「1本の時間の流れ」も意識していきたいです。なぜなら「その先」につながるプロジェクトだからです。朗読動画ではありますが、ちょっと不思議な空耳図書館の「リアルな読書会」の雰囲気が生まれたらいいなと思うのでした。
〇詳細はこちらの記事もご覧ください。
 空耳図書館コレクティブはササマユウコの個人活動『コロナ時代の新しい音楽のかたちを思考実験する②空耳図書館の活動を中心に』(令和2年文化庁文化芸術活動の支援事業)の一環として展開しています。

筆者:ササマユウコ(音楽家/芸術教育デザイン室CONNECT/コネクト代表)
2011年の東日本大震災を機にサウンドスケープを「耳の哲学」として世界のウチとソトを思考実験しています。空耳図書館、即興カフェのディレクター、福祉・教育現場でのワークショップ、学会発表、執筆等。2000年代の作品はYukoSasama名義でN.Y.より72ヵ国で配信中です。

 

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