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大して不思議では無いこと

ちょっと前、僕は新宿駅に仕事で通っていた。
仕事場は新宿駅から歩いて数分のところだった。
どっかからの出口(今じゃよく覚えていない)が会社まで一番近い降り口だったが、そこからの道が人も景色もごちゃごちゃしていて、好きではなく、わざわざ遠回りになるタイムズ・スクエア側の(何口かこれも忘れた)出口から通っていた。

ずっと仕事を辞めようと思っていたんだけど、
まあ、何もなくても近々には辞めたんだろうけど、
(大体わざわざ遠回りして静かな道から会社に通うような人間は会社勤めには向いていない)やめるきっかけ?の一つのエピソードがある。

その日は、詳しく覚えていないが、通勤電車関連で不愉快なことがあった。
肩がぶつかって舌打ちされたとか、理不尽に誰かにぶつかられたりとかそんなよくあることだ。(大体みんな殺気立って不機嫌ですよね)
そんなことがあった後、僕がいつものように遠回りの出口から出て、ヘッドホンでなんだっけな、珍しく、スペシャルズか、ピストルズか、オーシャンカラーシーンだか、リバティーンズとか聴きながら会社まであるいた。(いつもは通勤時あまりロックっぽいのは聴いていない 僕の心も少しささくれていて、それを利用してたまにはロックを聞こうと思ったのかもしれない)

会社までの道の半分ほどきたところで、後ろからふいに、肩を叩かれた。
ヘッドホンを外して後ろを振り返ると、モヒカンで黒の革ジャンを着た痩せたパンクスの若い人がいた。

「お兄さん、時計落としましたよ」
「え?あ、これ?どうもありがとう」

僕は知らないうちに腕時計を落としていたらしい。
若いパンクスはニコニコして僕に腕時計を渡してくれた。

その時に、ああ、もう会社辞めようと僕は思った。
そう確実に決心すると、何だかとてもうれしい気持ちになった。
ありがとうございますと僕は言って、腕時計を腕にはめて会社に向かった。

それでその日のうちに頭のおかしいパワハラ上司に
辞めることを僕は告げた。パンクスみたいに。

まあ、どうでもいいことで、大して不思議でも無い話なんですが。
その時から僕の時計はまた動き出しているわけです。




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