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UNの環境報告書斜め読み(2)

国連の環境報告書「Greening the Blue Report 2023」の輪読(?)実施中。

前回は、構成を紹介しつつ、独断と偏見を述べさせて頂きました。
今回は、GHGについて、気が付いた点をピックアップしようと思います。

最初にバウンダリーの説明をしておきますね。
算定対象は、スコープ1・2と、スコープ3のカテゴリー6「出張」のみです。
カテ6だけを算定に含めているのは、国連の任務が出張抜きには成り立たないことを十分認識しているからです。

では、GHG排出量を見ていきましょう。

「UN Secretariat」というのは「国連事務局」のことです。
全て略称となっていますが、その他については、報告書の中に「Glossary」がありますので、そちらを参照ください。

国連事務局が半分を占めていますが、納得ですね。
本部はニューヨークですが、世界中に地域事務所や特派員事務所がありますから、職員の移動も頻繁になります。国連機関もそれぞれ事務所を持っていますが、その比ではないでしょうから。

セクター別に見ると「Air Travel」が38%。
陸上・海上移動を含む「Other Travel」が15%ですから、倍以上です。
「Facility」というのは、事務所における、スコープ1・2排出量で、47%。

グローバル企業の算定は数回しかないので何とも言えませんが、スコープ1・2に匹敵するというのは、相当の規模かなと。これについては、過程を確認する必要があるでしょうね。

さて、国連は、その業務内容からして、削減努力のみでゼロにすることはできないと、白状しています。

The priority of the UN system is to reduce its greenhouse gas (GHG) emissions to the greatest extent possible. However, given the mandate and mission of the UN some emissions are unavoidable.

報告書では「unavoidable」な排出量を「Unavoidable emissions」と表現しており、ISO14068−1で言うところの「Unabated emissions」です。

この「Unavoidable emissions」を2020年までに100%オフセットすると、2015年にコミットしています。その方法は、CERのみと記載されていますが、おそらくパリ協定6条4項のクレジット(6.4ER)も含まれるものと考えます。

今回の報告書は、2022年の実績ですので「100%」でなければならないはずですが、実際のところは92%で、「Meets」に限りなく近い「Approaches」となっています。とはいえ、立派なものでしょう。

2.1は国連全体のGHG排出量でしたが、2.1.1は国連事務局のみの排出量です。

着目すべきは、右側の濃いグリーンの部分。全体の87%を占めています。
これは、「Peacekeeping and Special Political Missions」とあります。
つまり、事務局の排出量は、平和維持活動に因るものが殆どなのですね。

戦争による排出量は詳らかにされることはありませんが、この排出量からもおぼろげながら、その全容が垣間見られるような感じがします。

平和維持活動のデータは、GHGだけでなく、廃棄物及び水の排出量まで含め、「5 Peacekeeping and Special Political Missions' Reported 2022 Greenhouse Gas Emissions, Waste and Water Data」として、巻末に掲載があります。

国連だからこそなせる技に驚きでしたが、皆さんは如何だったでしょうか。

前回も話しましたが、58ページと短く、英語も平易で、さらっと読めます。
ご案内できなかった、廃棄物や大気汚染、上水・下水、生物多様性及び環境マネジメントシステムについては、是非とも本文に当たって見て下さい。
個人的には、「Glossary」も活用できると思いました。

ということで、UNの環境報告書のご案内でした。



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