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変化は突然訪れるのではなく…

「ずっとこのまま」は幻想だ。

時間は「点」で進んでいるように感じる。

瞬間、瞬間をコマ送りしているような感じで。

実際は、留まることない一本の線で流れているのだが、

体感的には、

自分を取り巻くものが動いているだけで、

時間そのものが減り続けている実感はない。

一つ一つのシーンは記憶に残るが、

あの出来事とその出来事が

切れ間なくずーっと繋がった延長線にあるようには

認識できない。

布の切れ端のように、

それぞれが独立して存在しているように感じる。

そうやって

強くインパクトに残るようなことと、

さして思い出せないようなことが、

きれいに一本線になって、

やがてゴールに行き着く。

そして、

気が付いたら

自分も、周りも、

変わってゆく。

美容室に住み着いていた野良猫が死んだ。

無責任と分かりながらも

エサを与え、

段ボールで小屋を作ってやり、

糞を掃除した。

最初は警戒心が強く、

全く近寄ることができなかった。

手を差し伸ばしても

「シャーッ」と威嚇してきた。

でもエサをやると、

背に腹は代えられないとばかりに、

恐る恐る近づき、

むさぼるように食べた。

それからしばらくは、

エサをやる時だけ近寄ってきて、

あとはこちらのことなど知らんぷりだった。

しかし最近は、

呼べば駆け寄ってきて、足に体をこすりつけてきた。

心を開いてくれたのか、

頭も撫でさせてくれるようになっていた。

クリーム色の毛と、サファイヤのようなブルーの瞳が美しく、

野良猫とは思えない上品な佇まいだった。

突然のことでとても信じられないが、

なんというか、

「ずっとこのままで居てくれる」と

どこか本気で信じていた。

ここでもまた、

一本線で流れ続ける時間を正しく認識していなかった自分がいる。

変化は突然訪れるのではなく、

一定の速度で、確実に近づいてくるのだ。

あとは布の切れ端のような思い出が

頭の中に点在しているだけだ。

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