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ゆるがない根拠・土台となる固定資産台帳_オンライン講演会「データを活用した持続可能な公共施設管理―集めた情報を伝えることの難しさに挑む―」

作らねばならないから作成している資料、これまでの慣習からなんとなく集めているデータなど、活かしきれていない会計/財政データはありませんか?
財務4表、資産台帳、事業別財務諸表や施設別財務諸表など、それぞれを重ね合わせることで見えてくる自治体の現状、将来像があります。
目的をしっかりとおさえ整理し、見せ方を工夫することで、財政課にとって価値のある情報になるだけでなく、現場や市民にとっても「自分たちで活用できる」ものになります。
 
11/7に開催したオンライン特別講演会「データを活用した持続可能な公共施設管理ー集めた情報を伝えることの難しさに挑む」では、小規模(町村)自治体での実務経験をもとに、実際にデータを整理し市民とともに活用することに取り組まれている現役自治体職員の財オタ(※)を講師に招き、
・財務諸表を活用したデータ整理
・それらのデータを使って作る中長期財政見通し
・財政状況を伝えるための工夫の具体的な方法
などについてお話しいただきました。
 
今回は講演会の内容の一部をご紹介します。
 
(※)行財政に関する本の執筆や専門誌への寄稿、国の有識者委員会の委員を務めるなどの有識者。


ゆるがない根拠・土台となる固定資産台帳

よく「財務諸表をつくったら、何かが変わりますか?」といった質問をいただきますが、財務諸表だけで全てが分かるわけではなく、何かが劇的に変わるものでもありません。
まずは、変わるためのスタート地点に立ったのだと思うくらいが良いでしょう。
情報を開示して、伝え、住民の方に納得してもらう。
これのツールが財務諸表です。
 
さて、財務諸表のベースとなるのが固定資産台帳です。
固定資産台帳は「ゆるがない根拠・土台」として財務諸表のほか、様々なデータに活用されます。
 
突然ですが、皆さんは今朝起きて、どれほど水道水を使いました?
ここに来るまで、道路や橋をどれほど通ってきましたか?
そして、これらが使えなくなるかもしれないと考えたことはありますか?
 
私はこの質問を講演会や研修会などで、よく参加者に問いかけます。
そして、3つ目の問いに対して「考えたことがある」と答える人は少ないです。
これは、無関心だったり、私たち公務員に絶対的な信頼を置いていたり、といったことが理由かと思います。
 
道路には、高速道、国道、県道や市町村道などがあり、これらの総延長は121万km(地球30周くらい)です。そして、このうち市町村道は84%にもなります。
老朽化した水道管は地球2周分。
また、こちらのスライドのように、水道料金や橋りょう、公共施設など当たり前になっているものにも、多くの予算が使われています。
 

こちらは、神奈川県秦野市の志村さんが試算したもので、今後40年でどのくらいの公共施設の削減目標が必要かを表したものです。

約半分の都道府県が50%以上(ピンク)の公共施設、あるいはそれに見合う事業の削減目標が必要という結果になっています。
インフラ資産で削減ができないもので50%近く占めているような自治体は、その他の教育施設や文化・スポーツ施設は削減しなければならないという状況になってしまいます。
 
このように資産台帳にまとめられる資産状態や維持管理費などは、様々な資料のベースとなる非常に重要なデータです。
 
私の自治体では資産台帳を作成したことによって、固定資産台帳に記録されている資産面積と決算書の財産に関する調書の面積が大きく乖離していることが判明しました。
この原因は、公有財産台帳の登録漏れや削除漏れが積み重なったことでした。
このことは庁内に周知し、資産台帳では同じことを繰り返さないよう注意喚起をしましたが、数年経っても登録漏れや削除漏れが多い状況が続き、資産に対する意識の薄さを感じることになりました。
 

伝えることの難しさ


財務諸表や固定資産台帳などで情報を開示しても、実際に利害関係が発生した時に住民の方に納得してもらうことは非常に難しいですよね。
 
私は最近、まさにこのスライドのようなことを考えるようになりました。

現実・平等・公平・公正。
このスライドで言うと、本当は身長に合わせた木箱が必要で、塀を無くせばそもそも問題が起こりません。
ですが、実際には「平等に」ということで、一人1個ずつ、木箱が配られることが多いのではないでしょうか。
平等が決して悪いわけではありませんが、公平、そして公正を常に意識しながら仕事をしていければいいなと思います。
 
私が住民の方に財政状況を伝えるために具体的に取り組んだことについてお話します。
財務諸表や固定資産台帳などでデータを整理したものの、公会計はとても分かりづらく、一般の方がすぐに読み解けるものではありません。
そこで、まずは公会計を知ってもらうことから始めるため、自治体広報誌に公会計について解説するコーナーを作り、約1年半、連載を行いました。
 
そもそも、財政状況を伝えるためのツールとして財務諸表が最適なのか?本当に住民が理解できるのか?といった話をよく聞きます。
確かに、財務諸表を読み解くのも、なかなか難しいとは思います。
ですが、財務諸表は民間企業でも使われている簿記と同じスタイルで馴染みのある方が多いという意味で、決算統計よりは分かりやすいツールではないかと思います。
商工会議所の簿記検定試験では、これまで2,600万人以上の方が受験しているそうですし、簿記は元々イタリア商人が地中海貿易で栄えた頃に発達した会計技術です。
つまり、財務諸表は世界共通のコミュニケーション言語となります。

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