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枠はどう設定する?枠越え要求への対応は?起債の扱いは?_オンライン特別講演会「対話による予算編成~枠配分予算の取組から~」

今回は3/22に開催しましたオンライン特別講演会「対話による予算編成~枠配分予算の取組から~」の内容をお届けします。

当日は、福岡市にて「枠配分予算」を導入、対話にもとづく予算編成を提唱されている財オタの今村寛さんを講師に迎え

・枠の上限額設定の考え方
・枠を越えた要求への対応
・現場の自律経営を促す仕組みづくり

などについてお話しいただきました。

参加者の皆さんからは

・講演前よりも枠予算導入のハードルが低くなった印象です。
・自分の市にあったモデルを作りたいという意欲がわきました。
・一件査定方式にも活かせる話があった。
・予算編成に携わってから感じたモヤモヤした気持ちが言語化されていて、とても共感しました。

などの感想が届いており、とても好評をいただいております。

本記事では講演中の質疑応答の内容をお届けします。

講演会本編は弊会公式YouTubeにて会員限定で公開しています。
視聴をご希望の方は下記から会員にご登録ください。

【会員対象】
・自治体財政部門職員
・自治体政策・企画部門職員
・財政課での業務の経験がある自治体職員
・財政に関心のある自治体職員

https://new-zaiseikenkyukai.com/307d4c8d1c534090a4bf3fbc1d54d3de

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【質問者】参加者の皆さん
【回答者】今村寛さん

Q 枠の設定はどのような単位で行うべきでしょうか?当市では枠配分予算のような仕組みを行っているのですが、枠の設定が課単位で、実質シーリングに近い形となってしまっており課題を感じています。

A 政策単位での設定が計算しやすく、管理しやすいと思います。
福岡市は副市長の下位組織として、政策分野ごとに局が置かれており、枠の設定は局単位で行っています。
もし、副市長の下位が部であれば、部単位で設定するとやりやすいと思います。
総合計画ごとの政策目標ごとに枠を設定するという方法も理論的にはあり得ますが、現実的には、担当部署がまたがっているために枠の取り合い・押し付け合いが発生し、これをまとめる長が明確でなく、収拾が大変、ということが起こります。
局や部単位で設定すると長が明確なので「最後は局(部)内で調整してください」と枠を渡しやすくなります。

Q 枠を超えた要求にはどのように対応していますか?

A 枠を超えたものは受け取りません。
枠に収まるように助言を行うことはありますが、担当部署が枠内に収めてくるまで待ちます。
また、福岡市の場合は要求が枠に収まっていたか・超えてきたかを市長に報告し、枠を超えて要求した長の評価(あくまでも心証ですが)に影響が出る仕組みになっています。
ただ、実際には予算編成を進めていく中で「追加で指示があった」「予算配分時と状況が変わった」「夏場の財源見込から大きくズレがあった」ということがあると思います。
こういった場合は、該当事業についてヒアリングを行い、必要性が認められれば義務的経費やトップマネジメント経費と同等に、枠外で要求できるような救済措置を行うことはありました。
この際、元々枠の中に含まれていた該当事業を行うための予算は枠から抜きます。
この救済措置は部局ごとにこっそり行うのがポイントです。
また、当初予算には計上せず、補正予算で対応するという救済措置もあります。
公共事業でよく行われるパターンで、「国の内示が出てから補正で対応するので、当初では枠内に収まる範囲で要求してね」といった方法です。

Q 枠配分とそれ以外の一般財源額の割合はどの程度でしょうか?

A 一般財源は義務的経費にかかる割合がものすごく大きいと思います。
割合は自治体ごとに異なると思いますが、令和6年度当初予算編成時の福岡市の一般財源は約5000億円で、このうち3500億円くらいは義務的経費でした。
残りのうち1500億円のうち枠配分予算は400億円程度。一般財源全体の1割にも満たない規模です。残りは特別会計・企業会計への繰出金やトップマネジメント経費、個別調整経費などでした。

Q 補正予算で要求された場合、来年度の枠から削るのでしょうか?

A これは議論があるところですね。
本来は補正予算に計上する=枠から外す、というのが前提となりますが、実際は「今年度は無理なので、来年度に回してほしい」と財政課から頼んでいる事情もあるので、担当部署との駆け引きとなります。
財政課としては「来年度分は来年度の当初予算に計上したいけど、これができないので補正予算に計上します。ただ、これは再来年度の前倒しだよね」という考え方ですが、担当部署としては「補正予算は国が内示で付けてくれた分を追加しただけ」という考え方もあるので、ルールはあまり無いと思います。

Q 当市は前年度予算ベースで枠を設定していますが、しっくりきていません。他に合理的な方法があれば教えてほしいです。

A 枠の設定に決算を使うと、どの部署も予算を使い切ろうとしてしまうので、「枠の設定に決算を使わない」というのが原則です。
そうすると予算ベースで設定することになりますが、前年度予算が正しかったのかを検証する必要があります。
福岡市では、6月の決算統計が終わった直後に「事前調査」として、「来年度、今年度の当初予算よりも大きく一般財源が必要となる事業があれば教えてください」と担当部署に照会しています。
具体的には、一つの小事業あたり1000万円を超える増額があるものを聞いています。
逆に言うと、1000万以下のものは担当部署内で調整してもらいます。
そして、事前調査で挙がってきた事業については増額理由をヒアリングします。
この理由が「政策の拡充」である場合は、枠の設定において特段の考慮をしません。
「対象者が増える」「法律が変わって自治体で実施することになった」など義務的な要素が強いものは枠の設定に考慮していました。
また、「今年度の予算額では足りなかった」という理由が挙がることがありますが、これに対しては年度末に流用をかけたのか確認します。
流用をかけている場合は「足りなかった」という理由の正当性が判断できるので枠の設定に考慮します。
最終的には、事前調査で必要性が認められた事業の合計額と来年度の財源見込を照らし合わせ、予算内に収まるように全体で調整が必要です。
なので、「増額分は考慮したけど全額ではないよ」と注釈付きで担当部署に返しています。

Q 枠配分の中で、地方債の対象事業の取り扱いはどのようにされていますか?編成の段階で対象事業の協議を各課としているのでしょうか?

A 福岡市では枠配分の拡充の取り組みを始めて2年目から起債も枠配分するようにしました。
1年目は一般財源のみ枠配分としていたのですが、起債の充当率が高い事業は一般財源をあまり使わないので、起債の充当率が高い事業に寄っていき、結果的に事業費が増えました。
事業費が増えること自体は良いのですが、将来の公債費に大きな影響を与えるので、公債費のことを考えると、起債も一定の額に抑える必要があるため、「起債枠」というものを設けるようにしました。
起債枠は、前年度の実績や起債メニューなどから設定しています。
なので、福岡市では一般財源と起債の2つで枠配分予算を行っています。

Q ひとつの事業に義務的経費と政策的経費が混在していると枠配分の管理が大変になると思うのですが、福岡市では、事業単位で義務的経費とその他のものを分けていますか?

A ひとつの事業の中に複数の経費が混在している場合は経費区分で分けていて、枠配分の対象の経費区分があれば、その分だけ枠の中に含めています。
福岡市ではこれをExcelで管理しているので、その点では煩雑さはあります。
 

Q 起債の枠配分について、起債管理計画のような後年度の償還金のシミュレーションを実施した上で枠を設定していますか?

A 福岡市では起債残高を減少させていこうという考え方で、当該年度の発行額を、その当該年度の元金の償還額よりも少なくするようにしています。
元金の償還額は予め分かるので、その範囲内に起債の発行額が収まるようにしています。
各担当部署の枠の設定は来年度の公共事業の見込や起債の発行見込などを事前調査でヒアリングし、元金の償還額を超えないように全体で調整をかけています。

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最後までお読みいただきありがとうございました。

講師の今村さんはnoteでも枠予算をはじめとした行財政について様々な記事を執筆されておりますので、ぜひ、ご覧ください。

【今村さんのnote】
https://note.com/yumifumi69

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