見出し画像

『他者と働く 「わかりあえなさ」から始める組織論』宇田川元一

(2022年9月 筆)
発売当時、新聞やSNSでもかなり言及されて話題になっていた。今年の初めごろから積んでいて、最近やっと手をつけ、めでたく読了。 

スタイリッシュな装丁と裏腹に、一本筋が通っていて、凄みすら感じる本だった。それでいて筆致は柔らかく、書いてあるいろいろなメソッド以前に、行間からにじむもので姿勢があらたまるような気持ちになる。

あとがきに書かれた筆者自身のナラティブを読んで「はぁ~~~」と長い息をついてしまった。すごすぎる。リアル半沢直樹やん。でも、この筆者は「倍返し」じゃなく「他者と働く」道を究めることを選んだ。

「彼ら一人一人の人間が邪悪だったのだろうか。そうではないのではないか」

「彼らが自分がやっていることの意味を、相手からは考えることのできない関係性の中にいたからではないか。形を変えて、同じような過ち、同じような弱さから、人間は逃れることはできないのではないか」

「だとすれば、私は自分の痛みばかりに目を向けていることは公平ではないと思った。彼らも、自分もまた、関係性を生きる人間である。人間は、関係性に埋め込まれ、身動きが取れなくなる弱い存在である」

「私は、そこに連帯を見出すべきであると思った。連帯とは、私がもしも相手であったならば、同じように思ったり行ったりしたかもしれないことを認めることである。私の中に相手を見いだすことである」

「私と彼らは地続きの存在なのだ。だから、一方的にではあるが、彼らと和解することにした。和解とは、これで一切そのことを恨まない、これでおしまいというわけではない。彼らを赦し、受け入れる道を歩む決意をしたのである」

「私がなすべきは、彼らを恨むことではない。声高に糾弾することでもない。私たちは敵と味方の関係ではないのだ。私たちは、共に弱さを生きている存在なのだ。この愚かで弱い人間という存在は、しかしそれゆえに、より良い関係性を生きることができれば、素晴らしい存在にもなり得る。希望に満ちた存在でもあるのだ」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?