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『麒麟がくる』 42話「離れゆく心」 二者択一しかない信長

この2~3回、ハセヒロの光秀が画面越しでもドキドキするほどかっこよくて! 『真田丸』の終盤、大坂城に入城した堺雅人を思い起こさせるものがあります。これは、一年以上かけて演じてきた役者がかもしだす深みであり、もうすぐお別れ(=最終回、しかも悲劇的な最期)だからこそ美しく演じる/撮ってる ってのもあるんでしょうね。よよよ‥‥

信長が癇癪をおこして光秀を打擲する、という古典的なエピソードの換骨奪胎がすばらしかった。

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白か黒かをはっきりさせたい、そのために相手を試す方法しか知らない信長。残酷な条件を提示して、「それでも自分に従うはずだ」と期待し、相手が不満を唱えれば許さず、歯向かえば見せしめに女子供まで一網打尽に殺戮する。

帝の言葉は第三者には漏らせません、と返事を拒んだ光秀に激高したあげく「帝を替えよう、譲位させよう」と言い出したときには、あまりのぶれなさにちょっと噴き出したw 

いやはや、承認欲求の塊で二者択一しかない、ほんと今日的な信長だと思う。
それじゃあみんな去っていくよね、という納得感。でも、信長自身も苦しんでるんだよね。喜ばせたくて愛されたくて一生懸命やってるのに、どうして認めてくれない? 愛してくれないの? 何故みんないっちゃうの?と、癇癪の向こうに涙が見える。

秀吉のほうも大概で、向上心の強さと能力の高さは比類ないものの、その根底に巣食っているのは身分が低くて貧乏で誰からも馬鹿にされてきた劣等感。
信長と秀吉の紐帯は、ど強いコンプレックス。この人物造型と関係性の設定はすごいよね。2020年(年明けちゃいましたが)に書かれるべき大河になってるもんね、ちゃんと。

まだ帰蝶が信長に嫁ぐ前、道三は若い光秀に「美濃には海がない、だから貧しい」と語ったことがありましたよね。
その後、尾張に潜入した光秀は、豊かな海産物がもたらす町の活気に驚き、彼が初めて見た織田信長は、夜明けの海の上、小舟で浜に戻ってくるところだった。

つまり、「麒麟がくる」において、かつて海は未来や希望の象徴であり、そのシンボルが信長だった。

昨日の回では、光秀は、京を追放された足利義昭と、またその後は徳川家康と、海に浮かべた船の上で会う。
そして、それぞれから「信長キライ。あいつがいる限り世の中うまくいかないよ」と言われるわけです(ざっくり)

何もかもが不穏だけど、長編ドラマならではの文脈の呼応があり、人の暗部やディスコミュニケーションをじっくり描きこんであって、本当に見ごたえがあります。

あと、
荒木村重の籠城のシーンで
「あー、岡田准一くん(または伊武雅刀 古w)が死にかけてるな‥‥」
と『軍師官兵衛』(または『秀吉』w)を思い出したり、

風間くん家康が信康事件を語ると
「今、阿部サダヲが苦悶し菜々緒が逃げ柴咲コウが奔走している」
と『おんな城主直虎』を思い出したりして、
大河のパラレルワールドを楽しんでいるオタクです。

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「おんな城主直虎」で菜々緒が演じた瀬名(築山殿)。美しかった‥‥

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