見出し画像

【意味怖】花咲か、爺さん…

いらっしゃい

また話を聞きに来たんだね

それじゃ今回は友達のあまめちゃんから聞いた「意味が分かると怖い話」なんてどうかな?



祖父が大病を患い長く入院していたが、最期は自宅で過ごしたいと帰ってきた。

代々続く大きな農家だったのでとても立派な屋敷だ。

家屋は古いが庭は広く、大きな桜の木がシンボルのように生えている。

祖父は「死ぬ前にもう一度、庭で満開の桜を見たい」と言っていたが、季節は12月。

さらに医者からはもってあと1~2か月と言われていたので、満開の桜は見ることができなそうだ。

でもなんとか祖父の願いもかなえてやりたい。

そこで俺は、親戚一同に協力してもらい祖父の願いをかなえることにした。


準備を整え夜になるのを待った。

祖父にはあらかじめ桜の木の見える大広間に移ってもらった。

移動はとても苦労した。

なぜなら酸素吸入や点滴の管につながれていて、そう簡単には動かせないからだ。

部屋から部屋への移動だけでも大仕事だった。


全ての準備が整い、外へと続く障子を開ける。

「じいちゃん、みてて。」

俺はそういうと大きな声で「お願いします」と中庭に声をかけた。
すると、暗闇の中、ぽつぽつと小さな青い光がともる。

それは次第に増えていき、桜の枝という枝から小さく青い炎が揺れだした。

祖父は状況が呑み込めず戸惑っていたが、しばらく見ていると声をあげて泣き出した。

それはとても壮観だった。

桜の木にともったたくさんの青い炎は徐々にピンク色に変化していき、
桜全体がゆらゆらとゆれる小さな薄紅色の炎により、ライトアップされた満開の桜のようになった。

種明かしをするとこれは単純な化学、炎色反応をつかったものだ。

乾燥剤や薬にも使われる塩化リチウムをアルコールと一緒に小さな皿に入れ、それに火をつける。

最初は青い炎だが、温度が上がってくると鮮やかなピンクの炎となる。

それを桜の枝という枝に仕込んだのだ。


この世のものとは思えない光景を見ながら祖父は亡くなった。

満足したかって?それはわからない。

残念ながらその日は風が強かった。



どうだったかな?

君も火の取り扱いには気を付けてね

それじゃ またね


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?