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一夜の夢

同じように厚い雲に覆われた夜空を見ていました。
龍が雲の切れ間から覗いていたあの空です。
月の光が漏れてくるのでわかりましたが、
また雲の切れ間が出来つつありました。
すべてが寝入っているように、周りは静かで
ぼくだけが空を見上げているようでした。
やがて切れ間は広がり、月光が充ちてきます。
そこに何色もの色の層が見えるのです。
「虹だ!」頭の中はそう叫びました。
夜の月光に照らされた虹の一部が、
雲の切れ間から見えていることに気づきました。
それがゆっくりと回るように動いています。
「月虹(moonbow)だ!」
再び頭の中に言葉が響きます。
一般に月虹は光が弱いので、色彩は淡く7色に
見分けることは難しいのですが、この時は
はっきりと見ることができました。
思えば、月の光自体がいつもより強いのです。
月虹の色が濃いのはそのせいでしょう。
それが月暈(つきがさ、げつうん)になって
ゆっくりと回っているように見えました。
雲の切れ間が広がってはいましたが、全体像は
見ることはできない大きさで、低く厚い雲の上の
夜空にある月虹をぼくは見ていたのです。
その不思議な光景に見ながら、
またぼくは眠りについたのでした。

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