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「泥銀箔の上にホログラム箔」

こんにちは。現場の前田です。

今回は、ブックデザイナーの石間淳さまからのご依頼で 『 猫町 』 の特装カバーをお手伝いさせていただきました。

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この 『 猫町 』 は萩原朔太郎の短篇小説 『 猫町 』 と、それを原作にした山川直人さまの漫画版 『 猫町 』 を一冊に収録した本で、2019年7月1日から始まる企画展、「猫町」装丁展( 7月14日まで開催 )にて、10人の装丁家による10通りの特装カバーで展示、販売されます。

「 猫町 」装丁展 萩原朔太郎×山川直人
2019年7月1日(月)~7月14日(日)

デザイン&ギャラリー装丁夜話 
東京都渋谷区神宮前1-2-9 TEL 03-3405-8983
12:00~19:00( 入場無料 )


石間さまがデザインされた『 猫町 』 に使用している紙は、石間さまが紙商「 紙の温度 」さんで出会った、イギリス製の四方耳付手漉きコットンラグペーパー。手漉きならではの温かみのある風合いの紙です。

さらに、この紙を石間さまご自身で繋ぎ合わせたものに箔押し加工を施しています。

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四方耳付( 紙の四方が断切されておらず、紙の周囲が毛羽立った状態の紙 )の手漉きの紙なのでサイズや形、厚さや風合いも、一枚ごとに異なります。

そのため、見当合わせが非常に難しく、箔の種類ごとに位置合わせ用のフィルムを用いて一枚一枚位置を合わせて加工しました。一枚ごとにフィルムで慎重に位置を合わせるので、とても時間のかかる作業です。

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箔の種類は顔料箔・泥箔・ホロシルバーの3種を使用しています。

イラスト部分は、打ち合わせの段階では1色でしたが、ご希望されていたホロメタル( 光沢系とマット系が混ざったようなホログラム箔 )の箔の在庫が工場になかったため、代わりに箔色をひとつ増やして2色で構成してます。

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今回の加工では、石間さまが立ち会いのもと、箔色を決めていきました。

箔押しの立ち会いが初めて、という石間さま。加工作業が始まると、とてもキラキラとした目で、熱心に加工をご覧になる姿がとても印象的でした!

当初ご指定いただいた茶色の顔料箔と消しシルバー( 艶ありのシルバーより光沢感を抑えたマット調のシルバー )の箔が、石間さまがご想像していたよりも色味が暗かったり、光沢感が眩しすぎるとのご意見をいただいたので、もう少し明るい茶色の箔はないか、もう少し光沢を抑えた消しシルバーの箔はないだろうかと工場の箔棚をあさり、発見したのが今回使用している茶色の顔料箔と泥銀箔です。

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試し押しで、ご指定いただいた箔よりも若干明るくなった茶色の顔料箔と若干光沢を抑えた泥銀をご覧になった石間さま。

その控えめにして妖しいニブビカリ( ←石間さまの泥銀の印象コメントです )
に 「 これだ! 」 となり、イラスト部の地の色と題名部分の箔色が決定しました。

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さらに、泥銀の上に重ね押ししてアクセントとなっている光沢感のある箔も、さまざまな箔を押して合わせてみたなかで、営業 青木おすすめのホロシルバーに石間さまはキュキュン!とされたということで、ホロシルバーに決定! 

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ニブビカリの泥銀とホログラムのシルバーの掛け合わせの、何とも言えない不思議な雰囲気
が萩原朔太郎の 『 猫町 』 の内容にもピッタリです!

これはぜひ是非実物を手に取って見ていただきたい珠玉の仕上がりです。

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立ち会いのもと箔色が決まった今回の加工ですが、現場で直に加工をご覧になっていただくことで、例えば、今回のように箔の色合わせなど、 「 少しイメージと違うな 」 というようなことがあれば、 「 何か他に合いそうな箔はないか!? 」 とその場で別の箔色のご提案をさせていただくこともできます。

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作品を目の前に、顔を合わせて意見を交わすことで、知られざる箔の種類や加工を知っていただき、お互いに新しい表現を見つけていくのは、私達にとってもワクワクする作業です。

立ち会い中、「 こんな箔の組み合わせ面白いんじゃない!? 」 というご意見などありましたら、是非とも教えていただきたいです! 

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【 連絡先 】

有限会社コスモテック 現場リーダー 前田瑠璃
〒174-0041 東京都板橋区舟渡2-3-9
TEL:03-5916-8360 / FAX:03-5916-8362

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