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「全面箔押し加工」

こんにちは、現場の前田です。

今回は 藤原印刷株式会社 の藤原章次さまからお声がけいただき、お手伝いさせていただいた 株式会社堀之内出版 発行、著者・ 斎藤幸平さまの書籍 「 大洪水の前に : マルクスと惑星の物質代謝 」 についてお伝えしたいと思います。

以前コスモテックのブログでもご紹介させていただきましたが、こちらの書籍には通常版と特装版の2種類があり、コスモテックは 【 通常版 】 の箔押しカバー、 【 特装版 】 の 布クロス表紙への箔押し ・ 函への箔押し加工に携わらせていただいております。 

装丁は大崎善治さまによるものです。

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通常版、特装版とどちらも見開きいっぱいに描かれた力強いクジラ。
書籍の加工でこのサイズの箔押し加工や作りの仕様をここまでやってしまうのはなかなかありません! 「 興奮しますね!? 」

そして加工には私、前田となんと装画を描かれた マツダケンさま の個展に足を運んだこともある、現場の辻が担当させていただきました。

なかなか加工することのない大きさの箔押し加工、分割して押すことなく、全面一回で箔押ししています。
このサイズの箔押し加工で難しいのは箔を均一にのせるまでの調整です。

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箔版の高さは均一に、平らに見えるようでいて実際には微妙に高さが違います。 また、版を受ける下の土台も加工で使用しているうちに微妙な凹みもでてきます。そうなると箔ののる部分とのらない部分が出てくるため、土台の方で調整を行います。

高さが均一になるように箔ののらない部分に薄い紙を重ねていく作業を箔が均一にのるまで何度も繰り返します。箔押しの面積が大きければ大きいほど調整も難しくなってくるので今回の大きさの箔押し調整はなかなか難しかったです。

他、加工ポイントとして、バリ( デザインや箔と紙の相性などによって箔押しした部分からはみ出してしまった箔のこと )を取るのではなく生かす方法をとりました。

マツダケンさまの微細に描きこまれた実際の絵の線は線と線の間が白抜きになっているのですが、かなりの密度があるためどうしてもバリが出てきてしまい、バリをコロコロ( バリを取る道具 )で取ろうとすると周りの箔も一緒にはがれてしまいました。

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そこで、圧力を強く加えて白抜き部分を埋めることで逆に筆致を際立たせる方法をとりました。[ ※ ] かなりの圧力が加わっているので、触ってみると筆致部分の盛り上がりを感じ取っていただけると思います。

※ 箔 de 埋め盛り 表現については こちら [ 部分的に 「 彫刻版風 」 に見せる技巧 ]

布クロスの表紙箔押しは函と連動したそれぞれ4色の箔押しをしています。

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布クロス自体の箔押し加工も美しく箔をのせることがなかなか難しいのですが、なるべくバリが出ないよう、文字が読みやすいよう線のエッジがスッキリ出るように心がけながら加工しています。

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通常版と特装版の校正ではご指定いただいた箔色以外の箔を現場の辻と太田、3人でかなり吟味してご提案させていただきました。

その結果、驚くことに…

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ご提案させていただいた箔色が特装版の函・布クロスの表紙で4色展開となって採用していただきました!!
予想していなかった結果に現場の皆で喜びました!

完成された通常版、特装版を見るとやはり気持ちが高揚します。

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普段カバーやケースなど私達が箔押しする際、一枚の紙の状態で加工しているので完成像がどうなるのか楽しみにしながら加工しているのですが、こうして本という形として作り上げられることで物質感を感じることができると共に達成感も感じます。

今回の加工では辻が以前マツダケンさまの個展に足を運んでいたことや藤原印刷さまがコスモテックでの箔押しを頼ってくださったこと、さまざまな偶然が重なりこの作品をお手伝いさせていただきました。このような豪華な仕様の書籍の加工に携わらせていただけてとても嬉しいです。

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そして、藤原印刷さま、堀之内出版さまのご厚意で なんと、辻と私の名前もクレジットに入れていただきました 。 「 大洪水の前に : マルクスと惑星の物質代謝 」 、特装版はとてもレアなので是非ともお手にとって触って愛でていただきたいです!


【 連絡先 】
有限会社コスモテック 現場リーダー 前田瑠璃
〒174-0041 東京都板橋区舟渡2-3-9
TEL:03-5916-8360 / FAX:03-5916-8362

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