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「人は死んだらどうなるのか」の問いに優しい答えをくれる映画【NETFLIX『パレード』】

「大切な人と離れたくない、別れたくない」

悲しいのは、苦しいのは、何も残された側だけではなく、大切な人を残して旅立たなければならなかった死にゆく側も同じ想いなのだ。

そんな誰もが一度は考えたことがある「人は死んだらどうなるのか」の問いに優しい答えをくれるものがたりがある。NETFLIX限定で配信中の映画『パレード』だ。

大災害の混乱で離れ離れになった息子を捜す母親は、自分がすでに死者となっていること、そして今いる世界が、この世に未練を残した者たちが集まる特別な場所だということを知り...。
(※震災を想起させる描写があります)

https://www.netflix.com/jp/title/81639031


あの世とこの世をつなぐ、不思議な世界で、あの世にもこの世にもいられない「未練」を残した者たちがそれぞれの過去と今と向き合う時間。

生きている者、死んだ者、双方の葛藤や後悔、希望が鮮明に描かれていて胸がぎゅっと押しつぶされる思いになった。


「最期の瞬間、後悔しないように全力で生きなければ」と焦り、死へのカウントダウンを恐れる私にとっては、そんなに肩ひじ張って生きなくてもいいと思わせてくれる作品でもあった。

そもそも、100%悔いのない人生なんて、あり得るのだろうか。

やり残したことは少ないほうがいいに決まっているけれど、たとえこの世に未練を残したまま亡くなったとしても、その後に「向き合う時間があるのかもしれない」と思うだけでずいぶんと気がラクになる。


本作を観て思い浮かんだのが、同じく藤井道人監督の『ヤクザと家族』という映画。

本作に出てくるナナ(森七菜)は、『ヤクザと家族』のツバサ(磯村勇斗)のような存在だと感じた。希望と言うべきか、未来と言うべきか。

ナナの抱える後悔や未練はとてつもないほど苦しいけれど、それでも希望はある。


さらに劇中で印象的だったのが、圧倒的な引きの画の強さだ。映像のルックの良さは、藤井作品で好きなところのひとつ。

繊細な表情がよくわかる寄りの画も良いけれど、この宇宙のどこかに、登場人物たちがちゃんと生きて存在していることがわかるのが引きの画だと思う。

朝起きて、夜眠る、移動遊園地の跡地。ひとりぼっちの屋上。みんなで映画を撮った海。月に一度、会いたかった人を探すパレード。

幻想的ながらも、すべてがどこか現実的に描かれているからこそ、救いのファンタジーとして心に浸透するものがある。

藤井監督自身は『パレード』を、“喪失を抱えた人たちの添え木”になれる映画だとおっしゃっていた。きっと、この映画をお守りにして生きてゆく人がいるのだろう。


映画ナタリーの『パレード』特集のインタビュー記事も、作り手たちの素敵な言葉がたくさん掲載されているのでぜひ読んでほしいです。


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