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バレエ界の、2月の勝者

もう初旬とも言えなくなってきているが、better late than neverということで。

2月の初め頃と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。

まず浮かぶのは首都圏の中学受験。私も経験者の一人だ。

だが最近の私には、この時期を迎えると中学受験の思い出よりも興奮させられる、バレエ界のイベントがある。

ローザンヌ国際バレエコンクール(Prix de Lausanne)である。

ローザンヌ国際バレエコンクール

通称、ローザンヌ
例年1月下旬から2月上旬の約1週間の日程で、スイスのローザンヌで開催されている。
と言っても例外はあって、ここ最近では2020年はボーリュ劇場改修工事のためモントルー開催、2021年はオンライン、今年は一昨年と同じ理由でモントルーとなった。

事前審査を経て開催地に集まった出場者たちが、1週間かけてクラシックとコンテンポラリーのレッスン、用意してきた踊り(ヴァリエーション)の個別指導を受け、ステージでのヴァリエーションのパフォーマンスを審査される。

審査の結果選ばれた出場者が決選に進み、もう一度ステージでクラシックとコンテンポラリーのヴァリエーションを踊る。
決選で評価を受けた出場者に賞が授与される。

この決選と授与式は当然コンクール日程の最後に行われるので、例年2月上旬となる。

ステージでのパフォーマンスは公式YouTubeで公開されるし、ここ数年はコンクールの模様の大部分が全世界に生中継されている。

日本では確か春頃に、決戦のみNHKで解説付きのテレビ放送がされる。

ローザンヌのすごいところ

その1:クラス審査

バレエのコンクールと言って一番分かりやすく想像されるのは、開催地の劇場に行って、衣裳をつけてメイクをして、ステージでヴァリエーションを踊る。この一発勝負で結果が決まる、というもの。

だがこのローザンヌは異なる。
クラスレッスンも審査対象なのだ。

初対面の先生から与えられた振付に対応できるか、受けた注意を理解しているか、昨日できなかったことが翌日修正されているか、1週間でどれだけ成長したか。

もともと持っている素質や技術だけでなく、指導を受ける姿勢、バレエへの向き合い方が審査されていると言えるかも知れない。

なぜなら、それらがプロのダンサーに必要な能力と見做されているからだ。

その2:審査基準

このコンクールの目的は、ステージで上手に踊れることを評価することではない。
プロダンサーとして成功する素質を備えた若者を発掘し、適当な機会を与えることにある。

だから審査においても、将来プロのダンサーとして成功するための能力に重きが置かれる。

生まれ持ったプロポーションや柔軟性、今持っている技術だけではなく、将来プロとしてのキャリアを歩めるか、成長し続けるための素地を備えているか。
バレエの基礎を身につけているか、基本に忠実に踊ることができるか、指導者や振付家の意図を理解し、踊りに反映させることができるか。

だから、このコンクールを見ていて思うのは、ステージで上手に「プロっぽく」踊れることが高く評価されるとは限らないということ。

日本でテレビ放映されるのはヴァリエーション審査のみの決選だけなので分かりづらいが、授賞の基準にはそれまでのクラスレッスンでの評価も重く考慮されている。

その3:出場者に与えられるもの

ローザンヌの入賞者には、スカラシップまたはプロ研修の権利(アパレンティスシップ)が与えられる。

スカラシップでは著名なバレエ学校で奨学生として学ぶことができ、プロ研修ではバレエ団で研修生として踊る機会を得られる。

基本的には1年間という期限付きの制度で、その期間を経て正規の契約や新たなチャンスを掴み取れるかどうかは、その後の本人の努力次第である。

そしてこのコンクールに出場して(現地での審査に参加し)チャンスを得るのは、入賞者に限った話ではない。

期間中のクラスレッスンや個別指導から得られる経験や刺激は、プロフェッショナルを目指す若者にとって有意義なものであるはずだ。

またこのコンクールには審査員以外にも、若き才能を発掘しに多くのバレエ関係者が訪れる。

受賞するに至らなかった出場者の中には、彼らとの相談やオファーによって留学の機会を手にする者もいるのである。

おわりに

最近は、正月が終わった頃あたりから「そろそろローザンヌ♪」なんてワクワクするようになってきた。

好みの踊りのスタイルの子を見つけたり、若い才能を目の当たりにしたり、かわいいレオタードを観察したり、バレエ好きの一般人としては色んな楽しみ方ができる。

また、数年経ってたまたま観に行った公演やニュースで目にしたダンサーが、「あのときのローザンヌの人だ!」となることもあって、ちょっとした喜びである。

私の個人的な感覚では、SNS上でバレエ界隈の一部がちょっと賑やかになるくらいの感じなのだが、せっかく生配信があるのでショパコンくらい盛り上がったら楽しいかもな。

とは言いつつ今年のローザンヌはもう終わってしまったので、そのうちあるだろうNHKでの放送を待ちたいと思う。

リンクまとめ

Wikipediaとコンクール公式とYouTubeのリンク。

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