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フィードフォワード面談 VS 従来の業績評価面談 どっちがパフォーマンス向上につながるのか? を調査した研究

こんにちは。紀藤です。本記事にお越しいただき、ありがとうございます。
さて、本日ご紹介の論文は、「従業員のパフォーマンスを高めるとする『フィードフォワード面談』が、本当に業績が上がるのか?」を検証をした論文となります。

ということで、早速みてみましょう!

<今回の論文>
『パフォーマンス向上への期待: 業績管理のためのフィードフォワードインタビューのフィールドテスト』
Budworth, Marie-Hélène, Gary P. Latham, and Laxmikant Manroop. 2015. “Looking Forward to Performance Improvement: A Field Test of the Feedforward Interview for Performance Management.” Human Resource Management 54 (1): 45–54.


15秒でわかる本記事のポイント

  • ポジティブ心理学をベースとし、従業員の成功体験や強みに注目する「フィードフォワード面談」という新しいマネジメント手法の効果が提唱されている。

  • 今回の研究では、その効果を確かめる実証研究を行った。具体的には、カナダのビジネス機器メーカーのマネジャーと部下、合計170名を対象に、従来の業績評価面談を行ったグループと、フィードフォワード面談を行ったグループで、4ヶ月後の業績評価がどのように変わったのかを比較した。

  • その結果、フィードフォワード面談を行ったグループのほうが4ヶ月後の業績評価が有意に高かった

というものです。

フィードフォワード面談とは何か

さて、このフィードフォワード面談とは一体何か?

一言で言えば、「メンバーの”悪い点”に焦点を当てるのではなく、”ポジティブな側面”に焦点を当てることで、パフォーマンスを向上させ、マネジャーとメンバーの協力関係を改善することを目的とした」(Kluger& Nir, 2010)新しいマネジメント手法です。

これが生まれた背景は、従来の業績評価(Performance Appraisal)の目的は、従業員のパフォーマンスやコミットメント向上とされているけれども、機能していないよね、ということで、その欠点を補い、代替する方法として開発されたのでした。

詳しくは、こちらの記事にて解説をしております。
(お暇があれば、どうぞ!)

「従来の業績評価」はなぜ効果的ではないはないのか?

「従来の業績評価に代替する方法を開発した!」とありますが、従来の業績評価の欠点を指摘していますが、具体的に何がよくないのでしょうか?

その理由として、本論文では「効果的ではない3つの理由」を述べていました。以下がそのポイントです。

理由1:従業員の満足度が低い(組織コミットメントも低い)

どうやら従来の業績評価(以下PA)は、従業員の満足度やコミットメントの観点から効果的ではないようです。その証拠として、以下のような研究を紹介しています。たとえば

・伝統的なPAは、従業員の職務遂行納涼を向上させる効果がないことが多い(Jawahar, 2007)
・伝統的なPAは、職務満足度に悪影響を及ぼす可能性がある(Ferrisら, 2008)
・劣悪なPA経験は、従業員の認識や態度に悪影響を及ぼす(Linnaら, 2012)
・良い評価のPAだったとしても、自分のPAに満足をしていない(Mani, 2002)

とのこと。

理由2:有用で、公正で、正確でなければ、効果を発揮しない

もちろん、従来の業績評価(PA)がNGというわけではありません。ただし条件付きで成果を発揮するようで。それは、従業員が有用であり、公正であり、正確なものと認めているときです。

しかしながら、実際のところは
・マネジャーからのフィードバックが偏ったものであると認識される
・政治的に動機づけられている(昇進や評価も)
なので、評価は不公正と思われているのが多いようす。
健全なPAシステムでも、従業員が、有用で、有効で、正確なものであると考えなければ、業績向上に役立たない(Levy and Willims 2004)。

とのこと。・・・うーん、なかなかキビシイですね。

理由3:否定的なものになり、防衛的になる

また、従来の業績評価は、否定的なものである傾向があるとします。
・否定的なフィードバックは、従業員のミスや欠点について議論することになります。人は否定されると感じると、防衛本能を生み出す傾向があるとします(Kluger&Denishi, 1996)。
・また欠点を改善する「欠陥モデル」は組織に貢献しようと思う人の意欲を減退させる可能性がある(Robertsら, 2005)
とされ、この点も問題であると指摘します。

本研究の全体像をお伝えします

上記の従来の業績評価の欠点をクリアするものとして、「フィードフォワード面談」が開発され、そして今回の研究ではその効果を検証してみよう!ということで、始まりました。以下、本研究の仮説や進め方についてです。

仮説

「上司からフィードフォワード面談を受けた従業員は、従来の業績評価を受けた従業員よりも、仕事上のパフォーマンスが有意に高い」

研究の方法

◎参加者
・カナダのビジネス機器メーカーの営業及び顧客サービスに関わる従業員
・上司:25名(平均年齢41歳、66%が男性)
・部下:145名(平均年齢46歳、68%が男性、平均勤続年数は11年)

◎進め方
・まず以下の2つの条件に無作為に割り当てられた。
 (実験群)フィードフォワード面談のグループ(上司13名、部下70名)
 (対照群)従来の業績評価面談(フィードバックに重点を置く)のグループ(上司12名、部下75名)
  
次に、フィードフォワード面談のグループには2.5時間の研修を行った。
(内容は講義→グループ討議→2人1組でのロールプレイング)

※講義は、部下の意識をポジティブな仕事体験に集中させる必要性についてであり、そのための質問方法を提供した。たとえば以下のようなもの。
(1)「ある目標を達成したときに、特に良かったと感じた具体的な出来事について教えてください」
(2)「あなたが個人的に効果的に活動できたのは、どのような状況があったからですか?」
(3)「具体的に何をしたら、生き生きとして活力が湧きましたか?」
(4)「あなたが言ったような考え方、感じ方、行動を継続的に行えるような条件や状況を作り出すために、今年1年何ができますか?」)

◎調査尺度
・測定の尺度は、以下の2つである。

1)パフォーマンス評価尺度(行動観察尺度:Behavior Observation Scale)(7項目)
(例:この人物は期限までにプロジェクトを完了する、この人物はこの仕事を改善する方法を積極的にみつける など)

2)公正さの認識(Perceived Fairness)(5項目)
(例:私の上司は、私の業績を評価する前に、私の意見を求めてくれるなど)

・それぞれの部下のパフォーマンス評価尺度を評価する同僚を割り当てた(評価者は、従業の役割/タスクを理解していることを基準に選ばれた)
・またバイアスがかからないように匿名で回答をさせた。
・また本調査は、面談の事後(4ヶ月後)に回答を行った。

研究の結果

各グループのパフォーマンス評価の平均点は以下の通りでした。

<パフォーマンス評価の平均点>
従来の業績評価グループ(フィードバックに重点): 3.14(SD=0.42)
フィードフォワード面談グループ: 3.30(SD=0.32)

<公正さの認識を調整した結果わかったこと>
また、公正さの認識が、各面談の結果に影響を与えることが想定されるため、そのスコアを調整しました。その結果、フィードバックを中心とした従来の業績評価の条件と比べて、フィードフォワード面談の条件のほうがパフォーマンスが有意に高いことがわかりました。

まとめ

本研究は「フィードバックに重点を置いた従来の業績評価面談と比較して、フィードフォワード面談の方が、4ヶ月の業績を向上させた」ことを示した初めての実験であると述べられています。

論文の限界として、個人差が考慮されていない、職務遂行能力のその他の媒介変数が調査されていない、無作為の割り当て条件に課題がある、などがあげられるものの、この知見は今後の人事考課の参考になるだろう、とのことです。

日本でもやってみたら、どんな結果になるのか、非常に気になる!と思った内容でございました。

(ひとりごと)論文の中で急に「知覚された正義(justice)」と新しい言葉が出てきて、え?「知覚された公正(Fairess)」じゃないの??と混乱をする論文でもありました。紹介したい論文だけに、混乱してしまう内容がちょっと残念でもありました(私の解読能力が低いだけかもしれませんが・・・)論文って奥が深いです。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!

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