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映し出された最高の自己像 ~強み開発のリフレクテッド・ベストセルフとは?~

こんにちは。紀藤です。本記事にお越しいただき、ありがとうございます!
さて、本日の内容は、「強み開発のリフレクテッド・ベストセルフ」という論文のご紹介です。

人は、他者からのフィードバック等で、セルフイメージを形成していきます。そのような他者との関わりも含めた「映し出された最高の自分像」、すなわちリフレクテッド・ベストセルフ(RBS)がどのように作られていくのかを理論的に解き明かし、その方法を提案をしている論文です。

強み開発の代表的な手段でもあるリフレクテッド・ベストセルフ。
どのようなものか、早速みてまいりましょう!

<ご紹介の論文>
『リフレクテッド・ベストセルフ(映し出された最高の自分像)を構成する:職場組織において卓越するための道筋を描く』
Roberts, Laura Morgan, Jane E. Dutton, Gretchen M. Spreitzer, Emily D. Heaphy, and Robert E. Quinn. 2005. “Composing The Reflected Best-Self Portrait: Building Pathways For Becoming Extraordinary In Work Organizations.” AMRO 30 (4): 712–36.

リフレクテッドベスト・セルフ(映し出された最高の自分像)とは

さて、私たちが「最高の自分」であると感じるのは、どんなときでしょうか。あるいは「卓越している」と感じるのは、どんなときでしょうか。

論文では、このような研究者の言葉が引用されていました。

”卓越していることとは、必ずしも名誉や栄光を得ることでも、他人の目からみて成功することでもない。それは自己に忠実であることを意味する。可能性を最大限に追求することなのだ”
Quinn(2002)

つまり、卓越する、最高であるとは、「生きている実感を持っていた経験」「心の奥底にある自分に忠実であった経験」「自分の可能性を最大限に追求していた経験」、そうした経験の中にあるというのです。

そして、そうした経験の中で、他者からもらった称賛・承認・フィードバックを通じて、私達は「最高の自分像」を自らの内側に構成していくといいます。

私が何者であるか、何者たりうるかを示す道標としての自己像、それを『リフレクテッド・ベストセルフ(映し出された最高の自分像:RBS)』と呼びました。

RBSは、言葉などで明示的にされているものもあれば、暗黙的な場合もあります。たとえば、ある論文ではこのような明示的な例がありました。

<最高の自分> ~チャッド・ブラウンの場合
最高の自分の、私は分かち合う。私は大きく生きる。深く呼吸し、人生のささやきをすべて吸い込む。
最高の自分であるとき、私は精神的、肉体的、感情的に自分自身に挑戦する。
最高の自分であるとき、私は仕事でも遊びでもなく、今を生きている。私は人生を愛している。私は真実と美の探求者である。私は自分の行動、自分の信念、そして他の人々やすべての生き物とのつながりに責任がある。
最高の自分である私は、小さく、目に見えず、取るに足らない存在だ。しかし人々は、私がいなければ気づかなかったであろう真実と美を、自分自身と周囲の世界に見いだし、私のおかげで身体的、感情的、精神的に良くなったと感じる。

見ていただいて分かる通り、一部のスキルを表すのではなく、横断的で、包括的で、理想や希望を含み、強みにも言及した、そのような自己像です。

そして、続く研究では、リフレクテッド・ベストセルフを構築するエクササイズにより、自尊心、自己効力感、ストレス耐性、幸福感に影響を与えることがわかりました。

どのように構成されるのか

さて、ではこのようなリフレクテッドベストセルフ(最高の自分像)はどのように構成されるのでしょうか? 以下3つのポイントをお伝えします。

その1:他者からのフィードバック

まず1つ目が「他者からのフィードバック」です。

たとえば、ある少年ジョンがお母さんから、「ジョンの描いた絵は素晴らしいですね!近所の人もみな、ジョンは素晴らしい画家だっていってますよ」と言われたとしたら、どうでしょうか。

おそらくジョンは、その言葉によって、自分に芸術的才能があると考えるようになり、自己概念を変化させていくことになるかもしれません。

まさに、他者や社会通じて(=リフレクテッド(映し出された))ことによって、自分像を構成し、または改定していくことになるわけです。

その2:衝撃をうけること

そして、2つ目が「衝撃をうけること」です。これは1つ目の他者のフィードバックも含まれます。人は「ハッとさせられた」ときに、大きく自己像が変わります。

たとえば、衝撃を引き起こす挑戦(チャレンジング・ジョルツ)によって、ハッとさせられることもあります。新しいことに取り組む、リスクをとる、好奇心を持って外の世界に飛び込む。そうしたことは既成概念を壊し、”新たな自分との出会い”にもなる可能性があります。つまり、「ハッとさせられる」わけです。

職場における挑戦とは、ジョブローテーション、ストレッチアサインメントのような「正式な挑戦機会」もあれば、急に同僚が休んでやったことがない仕事をしなければならなくなったという「非公式な挑戦機会」もあります。

そうした経験で、思いがけずリーダーシップを発揮することになったり、そして思いがけず評価されたりすることで、自己概念が変わり「最高の自己像」が改定されることにつながるわけです。

こうした「リフレクテッドベストセルフの修正を促す衝撃の4つの類型」として、以下4つに分類しています。

1,挑戦 ✕ 公式
:構造化された、または計画的な開発の機会(例:スキルアップの課題)
2,評価 ✕ 公式
:構造化された、または計画的なイベントで個人の貢献や強みを認める(例:退職祝い)
3,挑戦 ✕ 非公式
:構造化されていない、または偶発的な開発の経験(例:即興のリーダーシップ)
4,評価 ✕ 非公式
:構造化されていない、予期せぬ経験で、個人の貢献や強みを認める(例:思いがけない賛辞)

リフレクテッドベストセルフの修正を促す衝撃の4つの類型

その3:3つの資源

また、リフレクテッドベストセルフ(映し出された最高の自己像)が修正されることを促す3つの資源について述べられています。以下の3つです。

1,ポジティブ感情(経験への開放性や個人能力を高める)
2,人間関係の資源(社会的支援とインスピレーションをもたらす)
3,個人の主体性(変化を促す自己効力感をもたらす)

そして、こうした3つの資源が、「新たな衝撃を受ける機会(ハッとさせられる経験)」へと繋がり、その経験により、RBSが構成・修正されるとしています。(それをモデル化したものが以下の図となります)

映し出された最高の自己像を構成するポートフォリオ

まとめ(成長に役立てるために)

今回の論文では「リフレクテッドベストセルフ」という最高の自己像が構成される理論的なモデルを示しました。

一方、「どうすれば、リフレクテッドベストセルフを、意図的に構成できるのか?」については示唆をするのに留められています。(別の研究でこれを活用したエクササイズが提案されていますので、それはまたの機会に)

いずれにせよ、”映し出される”ということは、他者や社会など、自分が影響を与えられないことであり、かつタイミングや相性などによって、そのフィードバックやハッとする経験が、資源となる場合もあれば、そうではない場合もあるわけです。よって、

1,衝撃を受けるタイミング
2,フィードバックを与える人との信頼関係
3,他者のフィードバックと自己像をどう一致させるか
4,自己像を構成する社会的な文脈の影響を考える(社会的望ましさなど)

も考慮しつつ、検討することが大事であると述べています。

いずれにせよ、強み開発では幾度となく言及されているリフレクテッドベストセルフのベースとなる論文であり、自己像が構成されるメカニズムがよくわかる内容でした。

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